君が故 (151ページ)
門の前で待っていた沖田。下手に迎えにいって入れ違いになっては意味がないと近藤に言われた為、門までのお迎えである。珍しく大人しく待っていた沖田に驚愕の事が起こる。不知火が名前を担いで来たのだ。沖田が刀を抜こうとしたところ、彼に止められる。
「おっと、今日は戦おうとしてるわけじゃねぇんだ。このお荷物を届けにきただけだからよ」
『・・・ありがとうございました』
ぺこりと頭を丁寧に下げた名前ちゃんは僕の方へと歩いてきた。まるで大丈夫だというようで。自ら出していた殺気を終う。本当に用件はそれだけだったみたいで、すぐに彼はどこかへ消えてった。
「どういう事かな?名前ちゃん」
『俺にも、よくは・・・』
どうして不知火に担がれてきたの?どうして不知火と一緒にいたの?どうして不知火と会ったの?自分の心の中が真っ黒になる。羅刹のせいじゃない。これは・・・この感情は・・・
「・・・そっか。疲れたでしょ。早く部屋に戻りなよ」
『はい』
いつも通りの笑顔を浮かべて、いつも通りの僕を演じる。心の中を隠しながら。探られないように。体調が優れなかったのか名前ちゃんは大人しく部屋へと戻って行った。
「はは、僕らしく、ないな・・・」
こうしてる間にも病は名前ちゃんを蝕んでいるというのに。僕には何もしてあげることができない。情けない自分に嘲笑いを浮かべた。