君が故 (150ページ)
『ハァハァハァ…』
早く戻りたい。急いでいるのだが速く動けない。体中が痛く、時折咳をしていた。
『こほこほ・・・っ!!』
突然飛んできた弾丸を刀で弾く。
「おー、さっすがだな」
『何の用ですか、不知火匡』
人のいないところでよかった。下手に弾いてしまって誰かに当てたら大変だ。チキ…と刀を向け戦闘態勢に入るが不知火は銃を降ろした。
「お前と殺し合う気なんてねぇよ」
その言葉を聞き、名前も刀を戻した。あくまで警戒は解かずに。そんな名前を高笑いしながら不知火は少しずつ近づいていく。そして
『なっ、何をする!?離せっ!!』
ひょいと簡単に俵担ぎをしたのだった。
「天霧からの御達しだ。風間の野郎に貸しを作っておくのも悪くないしな」
捕まってねぇと落とすぜ、と脅され彼女は暴れるのを辞め、控え気味に背の方の服を握った。それを確認した不知火は通常の人間では出せないような、鬼でしか出せない速さで移動していった。