君が故 (149ページ)
「総司。少しいいか?」
「何ですか近藤さん」
いつものように近藤さんへだけは特別な笑顔を見せる。気付いていますか?こんな顔するの近藤さんの前だけなんですよ?そんな僕の考えなんて露知らず近藤さんは話し始めた。
「もうすぐ俺は新選組へ復帰する。傷も癒えたからな。それでだ、総司。お前はどうする?もちろん名前君は屯所へは連れて行けん。・・・俺は総司の意思を一番に思いたい。時間は余りないが考えておいてくれ」
最後に大人しくしておくのだぞ、と言い部屋を近藤は出て行った。
近藤さんが新選組へ復帰する。今までなら一番に喜んだであろうその事が今の僕を締め付ける。近藤さんか名前ちゃん、か・・・前までの僕だったら比べるまでもなく近藤さんを選んだのだけど、近藤さんと言えない僕は彼女に惚れている。自覚したのは最近だ。それまでは無意識で行動していた、だけど。
「どうしよう、かな」
新選組の剣になると誓ったのに。近藤さんのためだけに剣を振るうと誓ったのに。名前ちゃんの側にいたくてたまらない。名前ちゃんがせっかく治してくれた身体だ。僕の思い通りに刀が振るえますようにって。なのに・・・いや、だからこそ、なのかな。そこまでしてくれた彼女を助けてあげたい。そんな風に悩んでるなんて君は知らないんだろうね。
・・・そう言えば、今日は名前ちゃんの気配がないな。体調を崩したのかな?ちょっと心配になって様子を見ようと部屋へ行ったら驚いた。
「名前ちゃん!?」
いないのだ。どこにも。布団まで綺麗にたたまれている。僕の叫び声に驚いてか、近藤さんがやってきた。
「どうした総司!?」
「近藤さん!!名前ちゃんが名前ちゃんがいないんです!!」
僕はかなり焦っているというのに、近藤さんはあぁと安心しきった顔で言った。
「名前君なら屯所へ行ってもらっている。本来ならトシに来てもらうはずだったのだが・・・」
あの子大丈夫なのかな。もう立つことすらつらいだろうに。僕は名前ちゃんを迎えに門へと移動した。