君が故  (145ページ)

慶応四年一月。旧幕府軍と薩長軍との間で戦が始まった。鳥羽伏見の戦いである。数では旧幕府軍の方が上だったのだが最新の武器を使う薩長軍に旧幕府軍は押されていた。敵の攻撃が激しく、已む無く撤退となった新選組。そして大阪城へ行った新選組は衝撃の事実を知る。



「将軍が江戸に帰っただぁ!?」



大阪城にはほとんど武器が残っておらず、羅刹隊も銀の弾丸によりほぼ壊滅状態となってしまっていた。まさに八方塞がりだ。



「土方君、ここは我々も江戸へと帰りましょう」



苦渋の決断の上、新選組は江戸へ戻ることとなった。










名前、沖田たちを今のままおいておくことも出来ず、土方は三人を江戸に連れて行くことを決断。三人は戦況がどうなっているのか直接戦った彼らに問うた。



『そう・・・井上さんが』



そして井上が死んでしまったことを聞く。山崎が危篤状態であることも。できることなら治したい。だけど名前の労咳は悪化の一途を辿っている。下手に会えば移してしまう可能性がある。きっと山崎さんの怪我は治らないほど重症なのだろう。俺に力があれば。こんな病なんて負っていなければ彼を助けることができるのに。今の俺には何もすることができない。



『山崎さん・・・』



だが、その怪我が致命傷となり山崎は命を落とした。船での移動中であったこともあり、彼は水葬され、船に乗っていた者総出で見送ることとなった。そんな悲しい別れがまだまだ続くということを名前も千鶴も知らなかった。


|

[Back][Top]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -