力の代償 (131ページ)
「で、どうだったんだ?」
「なーんにも。ただ何らかの衝撃を与えることなどで思いだすかも、とだけでした」
さっそく屯所へ帰った名前と沖田は土方へと報告していた。
「・・・そうか」
名前の労咳の症状はあまり出ていないだけでかなり進行しており自力で立って歩いていることさえ軌跡だったのだ。鬼の力など松本先生を巻き込むわけにはいかずに曖昧にしか話すことができず満足な診察ができなかったせいもあるのだろう。
「もういいぞ下がれ」
「はーい」
『御意』
「ったく、名前をどうするか考え物だな」
咳をしている以上、他のものに移す可能性も秘めているはず。危惧されるのは沖田くらいなのだが。再び静寂の訪れた部屋で土方はぽつりと呟いたのだった。
「名前ちゃん。大丈夫?」
『はい、問題ありません』
松本先生が近場まできていたと言ってもかなりの距離を歩いてきた。そうとう疲れているはずだ。自分なら歩けていなかった。そう思う沖田は余計心配になるのだ。また鬼の力を使って無茶をしているのではないかと。
「何かあったら呼んでね。僕は部屋にいるから」
自分がいても休めないだろうと沖田は部屋を出た。その直後、名前が咳き込む音を聞きながら。