力の代償 (129ページ)
「災難だったな名前」
『原田さん。お手数をおかけしてしまって申し訳・・・』
「あぁ、いいって。俺が勝手にしただけだ。こういうときは謝るんじゃなくてだなお礼を言うんだよ」
『・・・ありがとうございます』
原田はこっそりと名前の部屋へと忍び込み、お手製のおにぎりを渡した。それは原田が握ったためかなり大きいものであったが彼女はそんなことなど気にせず、少しずつ噛んで食べてゆく。
「左之さん、名前ちゃんに手出さないでくれる?」
そこで現れたのは沖田。襖を勢いよく開け、笑っている表情に反して目だけは怒っている。
「おいおいそりゃねえだろ。総司のところにはちゃんと新八が行っただろ?」
「そうだけど。あんなの硬すぎて食べられないよ」
ほら、と見せたのはもはや米が潰れてしまって何だか分からない白い物体。こんなのを食べたら歯が折れてしまいそうだ。
『・・・でしたら沖田さん、どうぞ』
半分、いや三対七くらいの割合に分け、大きいほうを沖田へと差し出す。もちろん口付けた方は自らが持っている。
『俺はこれで十分なので』
「ありがとう名前ちゃん」
「俺に礼はねぇのかよ総司」
原田がからかうように言うと、まるでまだいたのと言いたそうな顔に沖田はなる。不機嫌になられて自らに被害が被るのはごめんだと原田はさっさと出て行った。
「おいしい?」
『よく、わかりませ・・・こほっこほっ』
「名前ちゃん!!」
『大丈夫、です。失礼しました、けほげほっ』
咳き込む名前の背中を沖田は擦る。こうなったのは自分のせいなのに無力な自分を恨みながら。