力の代償 (128ページ)
廊下を雑巾がけしていた名前は沖田が自分を呼んでいることに気付いた。沖田の部屋へと入ると、何やら読んでいる様子。
「名前ちゃん、これどう思う?」
これ、と見せてきたのは俳句。そこには”水音に添てきゝけり川千鳥”と書かれていた。他にもいくつか書かれているようで、目を軽く通してみた。
『俺はそんなもの嗜んだことがないので分かりませんが。・・・正直に申し上げるとお上手ではないと思います。季語が入っておりますが分かりづらいですね。はっきり言って下手だと思います』
そう言い終えた名前の顔をにやにやと笑いながら見ている沖田。どうかなされましたか、と名前が言うよりも早く怒鳴り声が響いた。
「総司ー!!てめぇまた盗りやがったな!!!!」
「おっと、逃げるよ名前ちゃん」
名前の腕を掴みながら沖田は走り出した。名前も訳の分からぬまま走り出す。
『あ、あの、沖田さん?』
「あの俳句土方さんのだよ。僕がさっきの言葉を土方さんに言ったらどうなるのかなぁ?」
黒い笑みを浮かべながら沖田は言う。そんな…と思いながら名前は逃げるしかなかった。結局、土方が二人を捕まえられたのは夕餉のときで。二人には夕食抜きという罰を与えられた。