力の代償 (126ページ)
その日は何やら騒がしかった。名前が何だろうと部屋の襖を開けると何かが胸元へと飛び込んできた。
「にゃー」
『猫・・・?』
どうしてこんなところに猫が?確か動物を飼ってはいけない規則になっていたはず。とりあえず胸元をぺろぺろと舐めらてくすぐったい。
「名前ちゃん、その猫捕まえてて!!」
沖田と斎藤がこちらへ向かって走ってきた。直前まで首根っこを掴んでいたのだが、急に猫が暴れだし名前は手を離してしまった。
『あっ。ごめんなさい』
「ううん、今は追いかける方が先決だからまたね!!」
早口にそう言い、猫を追いかけに行った。何だったのだろうと襖を閉めようとした時、客人がやってきた。
『原田さんに永倉さん、千鶴さんまでどうかしたのですか?』
「ちょっと部屋借りるぜ」
言葉を発する前に二人は名前の部屋へと足を踏み入れた。千鶴はきちんとした説明もなしに連れてこられた為、おろおろしている。そして先程猫を追いかけていた二人もやってきた。
「俺たちは今、大変な局面にいる」
「そこで千鶴ちゃんたちにも手伝ってもらおうという魂胆なんだけどよ・・・」
どうやら五日ほど前から屯所に住み着いているらしい。
『確かに準備をしている時に見かけたりしますが悪さをすることはありませんでしたよ?』
そう朝餉の準備をしているときによく見かけるのだ。だが悪さをするわけではなく、ただ入り口で見つめているだけなのだが。
「今日、ってかさっき昼の準備してたらあの猫が来たんだよ。鍋や皿、全部ひっくり返しやがった」
悲惨な情景が浮かび上がる。それで放置できなくなってしまったのか。話し合いの結果、効率的に作業を料理組と猫探し組に分けることになった。
「じゃあ行こうか名前ちゃん」
『はい、承知いたしました』
猫探し組みには名前、沖田、斎藤。料理組みには千鶴、原田、永倉となった。