力の代償 (123ページ)
その日もまた名前は沖田の部屋を訪れていた。力が足りなくとも無理矢理にでも沖田の労咳を治すため―――
『土方さん、少しお話があるのですが』
「名前か。入れ」
襖を明けて名前は土方の部屋へと入った。
『すみません、こんな時間に』
「いや問題ない。それよりどうしたんだ?」
『それは・・・』
他人の治療のからくりを名前は話した。力を使って沖田の労咳を自分に移し、自分の労咳は鬼の力で治したこと。そしてまた再発している沖田の労咳を治したいということを。
『ですが一つ問題がありまして』
力が足りないのだ。もしかしたら何らかの症状が出てしまうかもしれない。それまで静かに名前の話を聞いていた土方が口を開いた。
「総司の奴、変な風邪引いてやがると思ってたらまさかあの死病で有名なやつだったとは・・・お前に移っても治せるんだな?お前らの好きにしろ。ただ、総司にもきちんと話してからにしろよ」
『分かりました』
そして冒頭に戻る。名前は沖田に言えば拒否されると思い、土方の言いつけとは違って勝手に治そうとしていたのだ。
『自分はどうなってもいい。沖田さんがもう一度刀を持てるようになれば・・・』
最期まで刀を持って戦いたい、その願いを名前は叶えたかったのだ。
『こほっ・・・ふぅ』
一息つき、名前は鬼と化した。あの綺麗な鬼の姿に。力をこめ始めた名前の気配を察してか、沖田は起きた。
「名前ちゃん?」
『少々、痛いかもしれませんが、我慢してください』