力の代償  (116ページ)


「わっ」



壁を曲がった途端、千鶴が誰かとぶつかった。千鶴は恐る恐る顔を上げるとそこにはよく見知った顔が映る。



「はぁ、どうして潜入調査がこんな大事になってるのさ?」

「沖田さん、す、すみません」

『ごめんなさい。沖田さん、浪士たちどうにかしてもらえませんか?追いかけられてるんです』



僕の役目だし当然だよ、と沖田は名前に微笑みかける。が、名前は沖田のことなど知らんふりで、入り口へと急いだ。



「ははっ、ひどいなぁ」



なんて言いながらも楽しそうな顔を浮かべる沖田。お姫様を守る正義の味方なんて面白いかもね、と思いながら追いかけてきた浪士たちを峰打ちし、捕縛していった。

二人が出入り口へ辿り着いたときには追いかける浪士なんて誰一人いなくなっていた。山崎と沖田がどうにかしてくれたのだろうと思いながらこれからどうするべきかと考える。とりあえず目立つから少し隠れておくべきか?裏の方へ回っていれば問題ないはず。沖田さんなら気配で気付くだろう、と結論付け千鶴と裏の方へと回った。そこで悲鳴があがる。二人に対してではない。建物への悲鳴。



『え・・・?』

「なっ」



その光景は驚愕だった。燃えていたのだ。先ほどまでいた建物が。



「沖田さん!山崎さん!」

「山崎君ならとっくに撤回済。僕も無事。あまり大声出さないでね」



沖田は既に外におり、名前たちの後ろを捕縛した浪士たちを引きずりながら着いてきていた。千鶴は安心し、力が抜けていくように座り込んだ。この建物はもう終わりだろう。こんな所で出火だなんて運がない。隣の建物をどうするのか相談している人の姿が視界に入った。沖田が回りを見渡していたほんの一瞬。一瞬名前から目を離していた。その内に彼女は燃え広がる建物の中へと駆けて行った。二人が止める暇もなく。


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