力の代償 (110ページ)
「名前でも無理なら・・・」
平助を部屋へ運び終え、山崎に見てもらう。だが・・・
「これ以上、手の施しようはありません」
平助、と声が出そうで出ない。喉が渇いてしまっている。
「皆さん、そこをどいてください」
「山南さん」
「・・・あんたまさか」
嫌な予感が頭をよぎり、つい口を出してしまった。
「藤堂君に選んでもらいましょう」
そしてその嫌な予感は予感なんかではなくなる。平助は山南が出した瓶を手に取り、口にその中のものを含んだ。平助は、助かるために変若水を飲んだのだった。
この事件は後に油小路事件と呼ばれる事件となり、後世に語り継がれていくこととなる。そして、これは隠し通さなければならない真実であるが、新たに新選組幹部から羅刹を生み出してしまった忌々しい事件であった。