力の代償  (109ページ)

名前と共に部屋に戻ろうとしていた沖田の耳に平助君、平助君と千鶴の呼ぶ声が聞こえてきた。



「平助!?」



原田と永倉は血まみれの平助を運んできた。千鶴はずっと平助に語りかけている。



「名前、平助を治して・・・」



永倉の言葉は続かなかった。何故なら名前も辛そうに沖田にもたれかかっている状態なのだから。肩から血を流した跡が残っている。ぐったりとしている彼女にどうして頼めようか。だが彼女しか平助を生かす方法がない。



「名前ちゃん?」



沖田に抱かれたまま力を抜いていた名前が急に立ち上がりよろよろと平助へ近づいた。



『平助、君・・・』



名前は人間と戻っていたのをもう一度、鬼と化す。そして平助の傷口へと口付けるのだが。



『ど、して・・・』



平助の傷は治らない。少しは小さくなっているような気もするが全然足りない。小さく名前は呟いた後、気を失った。



「名前!」



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