力の代償 (108ページ)
「名前ちゃんと風間・・・?」
沖田が疑問に思ったのも仕方ない。二人とも鬼と化しているのだから。髪の色も瞳の色も違い、頭からは角が出ている。そして、沖田でさえ目で追うのがやっとの位の速さで風間と名前は斬り合っているのだから。
『っ、ぐ・・・』
「どうした?押されてるぞ」
当たり前の結果だ。鬼であれば人間よりは強い。だが鬼同士ならば女鬼より男鬼のほうが強いのだ。そして風間は純潔。名前は技術的に勝つことができても、力強さや速さで風間に勝つことは不可能である。
「名前ちゃ、ごほっげほ」
一時は治ったと思ったのに。どうして肝心なときに僕は刀さえまともに握れないのだろう。守りたい、助けたい人がそこで戦っているのに今の僕には―――何もできない。
キンッ、カンカンッ―ザシュッ
「名前ちゃん!!」
名前の肩口に風間の刀が刺さり、多量の血が吹き出してきている。名前は痛みにより左手で持っていた刀を落とした。
「まだ挑もうとするか?愚かだな。今のではっきりと結果は出たはずだが」
『ハァハァハァ…』
苦しそうに痛そうに、殺気は風間に向けたまま。僕はそんな彼女を見ていられなくて僕は気付けば風間と名前ちゃんの間に入っていた。
「貴様・・・」
「あんたの相手は僕だよね。この子に手を出さないでくれるかな」
チキ…と咳を我慢しながら刀を風間へと向ける。そんな僕を風間は面白そうに見た後、忌々しそうに舌打ちし消えて行った。何故だと思うとほぼ同時に背後から声がしてきた。
「お前ら!何してやがる!!」
近藤と土方が帰ってきた。叫びながら質問する土方を無視して沖田は名前に話しかけた。
「大丈夫?名前ちゃん。どうして風間と刀を向け合ってたの?」
『だい、じょうぶ、です。説明は、あと、で、よろしい、でしょう、か?』
ハァハァ、と肩を苦しそうに上下させて呼吸する名前。何とか意識は保っている状態だ。
「名前ちゃん?」
『ハァ、ハァ・・・ど、く・・・・・・』
「毒?」
まさか―――風間の刀に毒が仕込まれていた?だとしたら大分毒が回ってしまっているんじゃー・・・
「痛いかもしれないけれど我慢してね」
『っん・・・』
名前の傷口へと口付け、毒を彼女の体内から出すために血を吸う。
『あっん、いっ・・・』
珍しく声をあげる名前。いきなりのことで土方も近藤を言葉を失った。そして沖田の口の中が一杯になり、ぺっと地面に吐き出す。ある程度の毒を除去することが出来たみたいで名前の表情は少し楽になっているようだった。
『・・・ありがとう、ございま、す』