力の代償 (102ページ)
「全員集まったな。もう少し様子を見たかったんだが仕方ねぇ。・・・入ってきてくれ」
「はい。失礼します」
そう言って襖を開けて入ってきたのは斎藤だ。土方と原田以外は驚きの表情を浮かべる。それが当たり前の反応だ。
「本日付で斎藤は新選組に復帰する」
斎藤は極秘で間者として張り込んでいたのだから。
「ずるいなぁ一君。そんな楽しそうなことをしてるなんて」
「総司。遊びではないのだぞ。あんたは寝てなくて良いのか?」
「寝たきりの方が体調が悪くなるよ」
寝たきりになるほど今の咳は酷くない。だけど、労咳を再発したことは自覚している。たまに咳と一緒に血を吐いたりしてるんだ。前ほど喉の痛みはないけれど。
「伊藤派の動きに関してだが、新選組に対して明らかに敵対しようとしている。新選組を陥れようとしているのだ」
と斎藤は手に入れた情報を余りなく話す。
「そして、差し迫った問題がもう一つ。・・・局長暗殺計画を練っている」
「名前にやらせる気なんだろ?」
すぐさま斎藤の言葉に原田が付け加えた。
「名前ちゃんに?ところで左之さんがどうして知っているのさ」
「本人に言われたんだよ」
どういうこと?と原田に沖田は説明を促す。
「伊藤のやろうに近藤さんを殺すように言われたんだと。詳しくは聞けてねぇけどよ。名前が芸子に化けて伝えてきたんだよ。助けて欲しいってな」
「・・・と言うわけだ。伊藤さんには死んでもらうしかない」
まぁ当然の結論だろう。問題は伊藤さんよりも・・・
「平助はどうすんだ?」
「刃向かうようなら斬るしかねーだろ」
伊藤を殺すのならばこの中にいるものなら誰しもがためらわずに斬ることができるだろう。だが、平助は。仲間として共に戦ってきた平助を斬るのにはまだ心の準備が出来ていない。彼が新選組を出て行った時に敵となる、いつでも斬り殺せるようにしなければと思っていたのに。
「御陵衛士はこれで終わる。平助を助けるのには今しかない」
彼女は戻ってくる。その気がないと近藤を斬らせる命令が出たなんて知らせない。問題は平助。どうするつもりなのか問いたださなければならない。