力の代償 (101ページ)
だだだだだと屯所に足音が響く。
「土方さん!!」
途中で倒れた永倉を廊下に投げ捨てて土方の部屋へと原田は行った。
「うるせーな!廊下を走るんじゃねぇ!!」
「んなことより土方さん!!報告があるんだって!!」
「何だ?」
原田の切羽詰った顔に土方はただならぬ事を感じ、言葉を続けさせた。
「伊藤さんは近藤さんを暗殺する気だ!!」
「なっ・・・何で知ってやがる!?」
「はぁ!?土方さんだって何で知ってんだよ?!」
明らかにしまったという顔をしている土方。なんとなく原田は察したらしい。
「土方さん、あんたまさか―――」
「あぁ、そうだ」
もう少し後で知らせる予定だったが、斎藤を間者として送り込んだ。そう聞かされて俺は咄嗟に平助もそうであって欲しいと思っちまった。斎藤を送りこんだ理由は分かる。斎藤は山崎と共に監察方の任務もやっていたし、気配を消すのは得意だ。なにしろ土方さん至上主義なあいつが伊藤さんを選ぶなんておかしいと思ったぜ。でもな、平助は。平助はそうだって言ってくれねぇんだ。
「土方さん、一ついいか。俺が聞いたのは名前からだぜ」
斎藤とはあれ以来会っていない。平助にもな。名前には風間が襲撃してきたときと今日だけだ。
「いつ接触した?」
「あいつ、芸子に化けて俺達に近づいてきたんだよ。それで伊藤が自分に近藤さんを殺すように言って来たって・・・まぁ直接言ったわけじゃねぇが誤魔化しながらそう言ったんだよ」
「・・・名前が、か。おい原田、幹部連中を集めてくれ」
「いいけどよ、新八の奴はぶっ倒れてるぜ?」
「無理矢理にでも起こして来い」
原田は分かったよと出て行った。この後にどんな会議が始まるのか理解しながら。