力の代償 (100ページ)
歴史の立役者であった坂本竜馬が暗殺され、新選組は否応なしに歴史の流れに呑み込まれようとしていた。
京の町、小さな甘味屋で一人の男と一人の町娘が会っていた。一人の男と言えど、本当は女なのだが。その人は焦ったように頼み事をしていた。
『あなた様ならご存知でしょう。今の俺の立場を。・・・そこで頼みがあるのです。島原で新選組と会話したい。俺だとは気付かれずに』
「えぇ、だからあんな洒落たものを張ったのでしょう。また張っているみたいだし。・・・いいわよ。その代わりまた以前みたいに入れるようにしてもらえるかしら」
『分かりました。明日は少々予定があります故、その次の日でまた同じ時刻にここでよろしいでしょうか』
「問題ないわ。こちらも準備を進めておくわね」
『お願いします』
これで準備は整った。後は上手くやるだけ。大丈夫。俺はやれる。
以前君菊に強制的に着せられたものとは全く違う。化粧も着物も髪型も。まるで新しい自分を見つけたかのよう。
「名前はん。原田はんと永倉はんが来てますぇ」
『分かりました。今すぐ行きます』
誰でもよかった。気付いてくれそうな人がいたら。入ったときから二人は大分酔っている様子。永倉さんは呂律が回っておらず、原田さんも腹芸を始めている。・・・ちゃんと気付いてもらえるかな。
「おー別嬪が来たな!嬢ちゃん酌してくれ!!」
「ずりぃぞしゃのー!おえにも、酌してうれー」
とりあえず永倉さんに一回酌し、原田さんのほうへと寄り添う。
『新選組の人らは大変どすなぁ』
そうして上手く原田さんに近藤さん暗殺暗殺の内容を話した。
「本当か!?」
『えぇ、本当どすぇ』
「おい、新八起きろ!!急いで屯所に戻るぞ!!」
眠り込んでいる永倉さんを原田さんは叩き起こして。・・・ありがとな、名前と聞こえるか聞こえないかぐらいの音量で彼は呟いた。
『後は頼みましたよ。新選組の皆さん』