力の代償 (98ページ)
「名前君、少しよろしいかしら?」
沖田と屯所で話してから一月が過ぎた頃、突然呼ばれた伊藤さんの部屋。俺が伊藤さんの言葉に絶対服従だというところを見せ付けるかのように、わざと平助君と談笑していたところに呼んできた。俺の苦手な笑みを浮かべて。
『・・・近藤さんを、ですか』
「えぇ。あなたに頼みたいの。できるわよね?作戦は後ほど詳しく伝えるわ」
服従の証にとでも言いたいのだろうか。断ることは出来ないというのに、どうしてそんな残酷なことを。俺には近藤さんは斬れない。でもあれを外に漏らされることは阻止しなくてはならない。嫌だ斬りたくない。助けて。誰か、誰か助けて。もうここになんていたくない。千鶴の元に帰りたい。