”鬼” (96ページ)
鬼達が消え、土方は即座に被害状況を調べるよう指示した。
「大丈夫か?良く頑張ったな。」
「私が、私のせいで皆さんが・・・名前もあんなになって・・・」
千鶴が名前の方に目をやると咳き込みながらも抱きかかえる沖田の姿が見えた。
「男を女を守るのは正義だ。お前がいてくれたから普段の何倍も力が出たんだよ」
「皆さん・・・ありがとうございました」
涙を堪えながら千鶴は言った。原田はそんな千鶴の頭を撫で泣き止むのを待った。
「土方さん。名前ちゃんを治療してもらってきます」
「待て総司。今、そいつは新選組じゃねぇ。御陵衛士だ。応急処置だけしたらすぐに追い払うぞ」
「・・・分かってますよ」
分かっている。起きるまでここにいてほしいなんて僕の我侭だ。彼女が起きてしまえば面倒なことになる。それくらい分かっている。
「山崎君、入るよ」
返事など聞かずに襖を開ける。本当は名前ちゃんの身体なんて他の男になんか見せたくないけれど、これは治療。仕方ない。山崎は手際よく包帯を巻いていく。傷のところだけ包帯を巻いているのだが、あっという間に名前は包帯まみれになってしまった。
「あまり動かさないようにしてあげてください。お腹の骨が折れてしまっています」
「そんなこと言われても、ね?」
僕だって寝かせておいてあげたい。だけど、それが許されない。
「どうして君は御陵衛士なんかになったのさ」
新選組に戻ってきてよ。君がいないとつまらないんだ。けれどその願いは叶わない。
「山崎君、名前ちゃんのこと頼んだよ」
夜が明ける前に名前は山崎によって御陵衛士へと運ばれた。
「名前、大丈夫か?」
『うん、ありがとう平助君』
数日後、名前は目を覚ました。しばらく体が自由に動かず、斎藤と平助に看病してもらっていた。伊藤から何があったのかと問われるけれど、いくら問われても彼女は浪士に絡まれていた町娘を助ける為に斬り合いになっていたら仲間を呼ばれて圧倒的人数だったために勝てなかったと言い張った。