出会い (8ページ)
そして、彼女らは再び大広間に戻り、新選組の幹部たちの前で千鶴は己の身の上話をし始めた。
「私、雪村千鶴と申します。半年前のことです・・・」
千鶴が消息の途絶えた父を探しにはるばる京まで来たことを知ると、近藤は心から千鶴をねぎらった。そのときに千鶴の男装が暴かれ近藤を始めとする数人の隊士は驚いていたが、薄々と気づいていた者もいたようだった。
「お前、女か!?」
「うそだろ!?」
「どうみても女の子じゃないですか」
「そうは言っても…証拠がねーじゃねぇか」
「だったら脱がせればいいじゃねーか」
「えぇっ!?」
かばうように千鶴の前に出て、名前は脱がせればいいと言った原田に激しい殺気をぶつけた。
「じょ、冗談だって」
そして話は本題へと戻りどうやら綱道は新選組の関係者であることが分かった。しかし、綱道は一ヶ月ほど前から行方不明になっているらしい。
「昨日のことは忘れるなら綱道さんが見つかるまで俺たちが保護してやる」
「殺されずにすんでよかったね。とりあえずは、だけど。で、そっちの君は命の保障はされてないよねー」
また総司はからかうように言った。人を馬鹿にしたり陥れたりするのが、彼の楽しみのようだ。
『千鶴の安全が確認できたなら俺はどうなってもかまいません。斬るなり何なり、好きにしてくださって構いません』
「そんな・・・名前っ!」
千鶴を守れたら自分はどうなってもいい。彼女と出会ったときから考えは何も変わっていない。
「・・・お前は何者だ?」
『それは、どういう意味ですか?』
「そのままの意味だ。剣の腕はあるみたいだが、両腰差しなんていやしねぇ」
俺はただ少し刀が扱えるだけです。と言葉にした。それだけじゃ・・・と土方は文句を言いたげだったが山南が面白い玩具を見つけたかの如くそれを遮った。
「しかし、この二人を隊士として扱うのは問題ですし、彼女たちの処遇は考えなくてはなりませんね」
「だったら誰かの小姓にすればいいだろ」
「やだな土方さん、そういうのは言いだしっぺが責任をとらないと。あ、土方さんに二人も小姓はいりませんよね。名前くんは僕の小姓にしてください」
「総司がそういうのは珍しいな!いいだろう!ということで、千鶴君はトシの小姓、名前君は総司の小姓だ!!」
彼女たちに拒否権などありはしなかった。