第四衝突 【90ページ】

式場の扉は開いていて、絵麻が先に入っていた。そりゃそうだ。私がお手洗いに行っている間に行ったんだから。そしてその目線の先にいるのは…棗兄さんかな。もともと暗いのと逆行でよくわからないけど。



「誰だ?…名前か?」

『うん。久しぶり棗兄さん』



声で確信した。やっぱり棗兄さんだ。少しぶっきらぼうなところが初めて会った時を思い出させる。



『絵麻、この人が棗兄さん。椿兄さんと梓兄さんとの三つ子だって。棗兄さん、私の妹の絵麻です』



お互いに知らない者同士で困っていたのだろう。私が仲介人となってお互いを紹介する。



「お前の妹?ということは俺の妹にもなるわけだな。…悪かったな、さっきは」

「い、いえっ。よろしくお願いします。絵麻です」



私の時と同じように名刺を棗兄さんは渡してる。仕事用らしく、絵麻が反応した。



「あ、これ」

『この前、ゲームしたでしょ?』

「お前らの感想役に立った。ありがとな」



そうして話していると煩い声が式場に響き渡る。



「あれ、棗じゃーん★俺らに内緒でかーいー妹と話してるなんて…棗の癖に!!」



このうざったいテンションで嘘泣きをするのは椿兄さんだ。



「ひさしぶりだなー、棗★いくらなんでも独り占めなんて俺が許さないからなー!」

「そうだね。こんな可愛い妹たちを独り占めするのはよくないんじゃないかな」

「こんなに可愛いんじゃ君が主役になっちゃいそうだな」

「ま、馬子にも衣装ってやつ?」

「さすがね琉生。いい腕してるわ」

「うん。あだ名ちゃん、ちぃちゃん可愛い」

「お姉ちゃんたちお姫様みたい」



椿兄さんの後にぞろぞろとやってくる兄弟たち。髪も綺麗になった私達を見て三者三様の反応を見せている。その中でも要兄さんがやってきて耳元で囁いた。



「これじゃみんな夢中になっちゃうね」

『セクハラは止めて下さい要兄さん』



腰に回された手を抓って引き剥がす。



「いてて。あだ名ちゃんはつれないなぁ」



手をフーフーさせながら痛がる要兄さん。私は悪くないよね?
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