第四衝突 【89ページ】

青いドレスに身を包み、私はリビングにやってきていた。



「名前かーいー★ちょーかーいー」



そう言って抱きついてくる椿兄さんをかわして。皆の姿を見渡す。兄弟達はみんなスーツを着て、ビシッと決まっていた。



「避けるなんて酷いなぁー、なぁ梓」

「いきなり抱きつこうとする椿が悪いんじゃないかな。名前、ドレス似合ってるよ。可愛い」

『ありがとう梓兄さん』

「あだ名ちゃん。ドレス、可愛い。髪の毛、僕に、いじらせて?」

『うん、お願いします』



琉生兄さんがいつの間にか私の髪をいじっていた。そうだ、忘れるところだった。わざわざリビングにやってきたのは琉生兄さんに髪の毛をセットしてもらうためだったのに。ありがとう琉生兄さん。絵麻は私の前にセットしてもらったみたいで、綺麗に巻かれた髪を下ろして編み込みをされている。耳元にはドレスと同じ色の花が咲いてあった。アッという間に髪の毛はセットされていて。ドレスと共に入っていた絵麻と色違いの花の飾りが耳下で咲いていて、頭の上で絵麻みたいに編み込みされている。そんな長さないと思うんだけど。さすが美容師。



『ありがとう琉生兄さん』

「うん。あだ名ちゃん、可愛い。だから、すごく、心配」

『心配?』

「うん。僕も、ずっと、守れない」

『大丈夫だってー。心配しすぎ、琉生兄さん』



兄弟の車に乗り込んで私達はお父さんたちの結婚式場に向かった。

結婚式場へは式開場よりも早く着いて。自由時間となったので、私と絵麻はお父さんたちに挨拶しに行くことになった。



「『失礼します』」



お父さんは私達の姿を確認すると目を大きく見開いた後、眩しそうに細めた。



「見違えたね」

「ほ、本日はお日柄もよく。じゃなくて。えと」



お母さんもいると思っていなかったからか、絵麻の言葉はしどろみどろだ。そんな絵麻にヘルプを出そうと口を開きかけた途端、縁あってお母さんとなる美和さんが先に言葉を発した。



「まーまーまー。やっぱり女の子はいいわね」

『ありがとうございます』

「やっぱり可愛い。ドレスこれにしてよかったわ」

「美和さんも綺麗です」

「あらあら、美和さんですって。これからはママって呼んで欲しいわ」



ママって…。さすがにそんな歳でもないし、恥ずかしい。



『えっと、お母さん。これからよろしくお願いします』

「えぇ、こちらこそよろしくね。名前ちゃん、絵麻ちゃん」



戸惑っている絵麻に気づいて私が口を開いた。そして会話は終わるのかと思ったのだけれど、美和さんはグイッと私達に迫ってきた。



「ところで、ウチの兄弟達はどうかしら?」

『え?』
「へ?」



自分で間抜けな声が出たとは思った。だっていきなりだったし。何の前触れもなかったから驚いたんだ。



「雅臣や右京あたりだと歳が離れすぎているかしら?要と光は…そうね、椿と梓はお互いの依存から抜けるのが先だし、棗は上に比べて目立たないかしら?」



ポンポンと出てくる兄弟達の名前。私とその人たちは血の繋がりはなくてもキョーダイですよ?って言うか、棗兄さんの扱い酷くない?こういうものなのかな。

どうにかお母さんからの質問攻めから抜け出して私はお手洗いに、絵麻は式場を見てくると言っていた。私も後で式場行こうーっと。
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