第四衝突 【83ページ】



『………要兄さんがいながら止められないなんてね』



皮肉めいたその口調は自分を戒めるためでもある。要兄さんの隣を素通りし、階段を下りてテーブルの上にあるビールを片付けていく。



『あ、謝る必要なんてないですよ。親が再婚しました。だから君たちは今日からキョーダイです。なんて言われてキョーダイになれるなんてそんな小さい子じゃないもんね。弥君くらいだったら、素直に喜べたのかもしれないけれど。私も、家族って言ってるけど、多分心のどこかで家族じゃないって思ってる』



今まで赤の他人だったのだから。急に家族だなんていわれても戸惑うし、男の人ばかりだったのだから困って当然だと思う。私は男子とよく遊ぶから別に慣れてはいるけれど、ずっと女子の中にいた絵麻にとっては困惑ばかりだっただろう。今は大分慣れてきたみたいだけど。



「あだ名ちゃん、皆君たちのことは大切に思ってるよ」

『うん。ありがとう。片付いたし、絵麻の方見てくるね』

「おやすみあだ名ちゃん」

『おやすみなさい』



会話を早々と切り上げて、リビングから逃げ出した。結局私はすぐに逃げちゃう弱虫なんだ。



『絵麻?大丈夫?』

「お姉ちゃん?」

『うん、入っていい?』

「うん」



しつれいしまーすと入る。絵麻の部屋は相変わらず綺麗に整理整頓されている。



『大丈夫?』

「だ、大丈夫だよ」



私はそう言って絵麻の頬が赤く染まるのを見逃さなかった。兄さんたち、何か余計なことしてくれたな…。とりあえず絵麻が思ったほど落ち込んでいなくてよかった。すぐ謝りに行かせたからかな。



『おやすみ、絵麻』

「おやすみなさいお姉ちゃん」



あ、昴兄さんに誕生日プレゼント渡せてない。

翌朝。昴兄さん、そして椿兄さん、梓兄さんから謝罪された。そしてその後、事情をしった右京兄さんにその3人と要兄さんは般若のごとく怒られていた。



『昴兄さん。はいプレゼント。昨日渡せなくてごめん』

「あ、いや…あり、が、とう」



プレゼントの中身はリストバンド。バスケ部の友達の意見を参考にしてみた。タオルでもよかったんだけど、いい感じのリストバンドを見つけたのでこちらにした。



「いいなー、昴、うらやましー」

『うるさい椿兄さん。椿兄さんの時にはちゃんとプレゼントあげるから』

「本当!?楽しみにしてんからねー★」



っとは言っても、その辺誕生日の人多いんだよね。右京兄さんに、椿兄さん、梓兄さん、そして1月になったら棗兄さん、弥君と年末年始の誕生日率高すぎ。クリスマスプレゼントもあるし。

まだお小遣い貯めて大丈夫だと思うけど、早めに買っておかないとお金がたりなくなってしまいそうだ。そういう面では絵麻と2人きりだったから楽だった。誕生日はプレゼント交換しあって、クリスマスにも交換して。あ、絵麻は未だにサンタさん信じてるんだよね。私がこっそり早く起きてプレゼント置いてるだけだけど。…ん?ちょっと待って。結局、誕生日プレゼントが5人分で、クリスマスプレゼントが13人と絵麻×2?うん、破産する。バイトしたいけど時間がなー。ただでさえ部活終わるの遅いし、右京さんに言ったら怒られそうだ。
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