第四衝突 【80ページ】
やっぱり琉生兄さんはすごいなぁって思う。だって戻ってきたらすぐにネイルに取り掛かって、あっという間に可愛く爪を変身させちゃうんだもん。
『絵ー麻っ』
絵麻が包丁を離したスキを狙って飛びつく。だって後ろから見ても分かるくらい髪の毛が可愛くセットされていたから。
『可愛い!さすが絵麻!!』
「お姉ちゃんも髪の毛セットしてもらったんだ。可愛い!」
『ありがと。で、何を手伝えばいい?』
「スポンジは作ったからクリームを泡立ててくれる?」
『はーい』
誕生日ケーキ。私と絵麻は双子だから同じ日に生まれてきた。だから年に一回の楽しみ。交代でケーキを作ったものだ。おかげでスイーツ作りに興味を持ったんだよね。自分の食べる分を作るのも、私が作ったものを絵麻に食べてもらうのも、すごく嬉しくて。
『絵麻、私も飾りつけしていい?』
「もちろん」
二人で仲良くクリームを塗ってイチゴを乗せていく。こういう風に二人で作るのは初めてかもしれない。
『「…完成!!」』
家にいる皆が呼び集められ、パーティーが始まる。
「おいしそー★」
「食べるのもったいないくらいだよ」
「すごいねおねえちゃん」
ケーキを見て兄弟達はそれぞれの感想を述べていく。でも美味しいのかどうかは自信ないなぁって絵麻は言っていた。確かにこんな大きさのケーキを焼いたことないもんね。基本二人だったし、多くても三人分だ。
「これ、おめーらが作ったんだよな?」
『うん。私はクリームをしただけだけど。あと絵麻と一緒にトッピングね。ほとんど絵麻が作ったよ』
板チョコに綺麗にHappyBirthdayと綺麗に書いてあるのを見て、絵麻は満足気な表情を浮かべている。ちなみにソレは私が書いたものだ。そういう所だけは器用だったりする。
「昴兄のためにおめーが…俺、食えねぇ」
「え?どうして?ケーキ嫌いだった?」
「いや、そうじゃねぇけど。でも、俺、食えねぇ」
侑介の顔は赤く染まってしまってるし。どうして当の本人たちは気付かないかな。あんなにラブオーラ出してるのに。でもそんな侑介を楽しそうに椿兄さんがからかい始めた。
「じゃあ俺がもっらちゃうね?」
「え、なっ、な………」
あわあわする侑介。こういう反応するから椿兄さんに楽しまれるんだろうな。私も結構楽しんでるけど。
「あ、俺、妹たちに食べさせてもらえたらちょー嬉しいかも」
『「結構です」』
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