第三衝突 【77ページ】
部屋に入って、ドアにもたれ掛かりながら座り込む。
『……なに、あれ』
見たこともないような表情で。聞いたことのないような苦しそうな声で。あんな椿兄さん、知らない。キスされて、拒否できなかったのは初めてだった。椿兄さんに魅入られて。抵抗する気さえ起こらなかったんだ。
『どうしよう…』
私達は兄妹なのに。家族なのに。絵麻が隣にいれば100人中99人は絵麻の方がいいって言うのに。…椿兄さんって実は趣味悪い?
『もう寝よ』
頭がまともに働いていない。もう明日考えよう。ドクンドクンと脈打つ心臓を宥めながら私は無理矢理眠りについた。
翌日、椿兄さんにどういう顔をすればいいのかって思っていたけれど、彼は悔しいくらいにいつも通りで。何だ、悩んでた私が馬鹿みたいじゃん。そもそも多分、って何!?って話だよね。私が知らないっつーの!!私もなるべくいつも通りを装いながら挨拶する。何事もなかった。ただ兄妹で映画観て食事しただけ。
『おはよう、椿兄さん。梓兄さん』
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