第三衝突 【76ページ】
帰り道、二人で並んで歩く。まぁ椿兄さんのほうが歩くスピードが速いから私に合わせてくれているんだけど。
『ありがとね、椿兄さん』
申し訳なかったから、と言うのが目的のデートだったのに、いつの間にか普通のデートと化していた。私がリードするはずだったのに椿兄さんがリードする形になっていて情けないばかりだ。
「名前」
マンションももう目の前という所で椿兄さんが振り向いて目線がかち合う。いつものふざけている声音と違い、本気の瞳が私を捉えていた。
『椿兄さん?わっ!!』
急に肩を掴まれて抱きしめられる。胸元に埋められたかと思えば、今度は腕の分だけ離されて。
「…俺、多分、名前のこと好きだ」
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