第三衝突 【74ページ】


昼食前に絵麻に起こされ、仕方なくリビングへ向かう。



『んー、よく寝た』

「おはよう、よく眠れた?」

『まぁ、うん』



いつもの場所、椿兄さんと梓兄さんの間に座っていると、梓兄さんから話しかけてくる。珍しいな、いつもは椿兄さんのほうが先に話しかけてくるのに。そう思って椿兄さんの方を見てみると何やら落ち込んでいた。私を見て。私、何かしちゃったっけ。



『椿兄さん?』

「はっ、はひっ!?」



全く覚えがないのだけど。何かあったっけ。



『椿兄さん、私、何かした?』



寝ぼけて何かしちゃったのかも。記憶はないけど。



『絵麻、知ってる?』

「…え!?えーっと」



そう言って眼を逸らす絵麻を見て確信する。私、何かしちゃったんだ。



『絵麻』

「お姉ちゃん、寝ぼけて、椿さんを、背負い投げしてた、よ………」



言いづらそうに蚊の鳴くような声で言う絵麻。…あちゃー、やっちゃったか。私、寝起きが悪いんだよね。だから無理矢理起こされたりしたらかなり不機嫌になる。しかもその時の記憶がないからたちが悪い。



『あー、ごめんね?椿兄さん』



絵麻の声が聞こえた兄弟たちが反応する。



「背負い投げって…名前、空手でもしてたの?」

『うん、小学校の間だけ』

「お姉ちゃん、すっごく強かったよね。黒帯だったし」



すっごく椿兄さんに申し訳ない。寝ぼけて背負い投げしちゃったなんて悪いし。このまま放っておいてもいいんだけど、梓兄さんの目がごめんね、って言ってるんだよなー。



『………椿兄さん、デートしよっか』

「うんっ!する!!」



すぐさま笑顔で食いついてくる椿兄さん。キラキラ笑顔はうっとうしいけど、いじいじされているのも面倒だし。



『じゃあ昼ご飯食べて行こっか』



本当は今日、一日中家にいる予定だったけど、仕方ないから適当に付き合おう。

私が強いことが分かれば、むやみやたらに抱きついたり、ちょっかいを出したりはしないだろう。2人きりだけど大丈夫だよね。椿兄さんに買ってもらったチェック柄のミニスカートを履いて、それを元に絵麻にコーディネートしてもらった。



「お姉ちゃん、止められなくてごめんね」

『ううん。絵麻じゃなくてよかった』

「お姉ちゃん私にそんなことしたことないよ?」

『気をつけてるからね。じゃあ行ってくる』

「気をつけてね」



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