第三衝突 【67ページ】
梓兄さんと話しているときだった。急に私のパーカーの前が開いて、私の肩からずり落ちていった。
『つ、椿兄さん!!』
いい加減怒るよ!?急いで落ちたパーカーを拾い上げようとした手を椿兄さんに止められる。
「名前、本当に可愛い」
耳元で囁く椿兄さんはズルイ。自分の魅せ方を知っているんだ。
『………っ』
耳から首元へと椿兄さんの顔は移動して、髪の毛がくすぐったい。
「椿」
また梓兄さんは椿兄さんを引き剥がそうとしてくれる。そのときにチュウ…という音を伴って椿兄さんは離れた。
『つ、椿兄さん!!』
「椿!」
「もー、梓ー。邪魔すんなよー」
「ごめんね、名前。大丈夫?」
『あ、う、うん』
多分、私の顔は恥ずかしさで真っ赤だと思う。だってあんないい声で、あんな距離にいたら普通は恥ずかしい。この顔の整った椿兄さんが近づいてくるのが悪い!少しの間、頬を手で隠していると椿兄さんが提案一つの提案をしてきた。
「名前、小島行かね?」
『へっ?小島??』
「そー、少し離れたところに小島があるんだー。名前が来る前に梓と話してたんだよねー」
「うん。こっちの砂浜とはまた違う浅瀬が見えるよ」
彼らが指差したのは本当に小さな島だった。行ってみたいかも。
『うん、行きたい!』
「よし決まりっ」
「じゃあどうぞ」
梓兄さんに促され、私は停めてあったボートに乗り込む。乗った瞬間、グラッときたけれど先に乗っていた梓兄さんに支えてもらった。
『ごめん、梓兄さん』
「ううん。大丈夫?」
『ちょっとバランス崩しただけだから』
数分で島に着いた。船を操縦してくれたのは梓兄さんで。大学在学中に取ったんだとか。さすが梓兄さんだよなぁ。
「名前、おいで」
船から降りるときなんて手を差し伸べて支えてくれた。いつもよりも何だか2倍増しくらいで梓兄さんが格好よく見えた。
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