第三衝突 【62ページ】

名前はいつも通り朝早くから走り込み、シャワーを浴びて、リビングへ来ていた。



『琉生兄さん、風邪引きますよ』



フローリングの上で寝ている琉生。名前一人ではソファーまで運ぶことなどできないのでぐっすりと眠っているところ悪いけれど体を揺する。



「…ん、あだ名ちゃん………?」

『はい。琉生兄さんこんな所で寝たら、いくら夏でも風邪引きます』



目を擦って、琉生は完全に目が覚めてしまったようだ。



「ふわぁ〜…おはよう、あだ名、ちゃん」

『おはようございます』



一つ、彼女の大切な妹がいなくなった時の事件から気になっていることがある。今なら聞いてもいいだろうか。この時間ならまだ皆寝ている。誰に聞かれる問題もない。



『琉生兄さん。琉生兄さんってもしかして、養子………?』

「…うん。僕も、家族の、誰とも、血が、繋がって、ないんだ」



もし違えば、気分のよくはならない質問だろう。それでもしたのはどうしても気になってしまったから。始めは他の兄弟達と癖が少し違うのかな?ってくらいだった。けれど絵麻が自分が養女だと知って家に帰ってこなかった日、琉生兄さんが迎えに行くと言ったことで確信を持った。この人はもしかしたら私達と同じなんじゃないかって。だから失礼だとは思いながらも聞いてしまったんだ。



「うん。僕も、ちぃちゃんたちと、一緒なんだ。僕は、昔、施設にいて…二歳の、ときに、母さん…美和さんに、引き取られた。だから、棗兄さんまでの、人たちは、知っている。けど、それより下の、5人は知らない。子供の頃は、悩んだ。沢山の兄弟が、いた、から。だけど、母さんは、同じように、接してくれて。でも、だからこそ、意識した。皆にはやっぱり癖とか、一緒のところが、ある。それが僕だけには、ない。だから自分が、いていいのか、分からなくなった」



父には感謝してる。自分達がもし施設に入ってしまえば、たちまち別々になっていただろうから。父親せいで悩むことになってしまっても。



「でも、考えが、変わってきた。母さんは、美和さんで、兄弟は、家族だって。大切なのは心だって、思い始めた。あだ名もちぃちゃんも、大切な家族。僕は、そう思ってる、よ」

『ありがとう、琉生兄さん。私も皆、大切な家族だと思ってるよ』



ぎゅっと琉生に抱きしめられたので、彼の背中に手を回してぎゅっと抱きしめる。これはただの家族としての抱擁だ。



「ちぃちゃんは、僕達が、守るからね」

『え…?』

「僕と、ジュリさんは、ちぃちゃんを守る会、なんだ。ちぃちゃんを守る会は、いつでも、ちぃちゃんを、守る。ちぃちゃんの必要なときは、いつでも、ちぃちゃんのために、行動する。…でも、あだ名ちゃんは?」

『私は守られなくても大丈夫だよ。十分強いんだから』



ね、と笑顔を見せてみても琉生は納得のいっていない顔だ。



『それよりも、私も入っていい?ちぃちゃんを守る会!私だって絵麻を守りたいもん』

「もちろん、だよ。ねぇ、あだ名ちゃ…」

「おはようございます、琉生さん。それにお姉ちゃん」



丁度いいところに絵麻がやってきて来てくれた。おかげで話は終わり、私は着替えてくる、と部屋へと逃げ込んだのだった。私を守る?私は守ってもらわないといけないほどヤワじゃない。自分の身くらい自分で守れるつもりだ。でも。琉生兄さんの強い瞳に魅せられてしまって、あのままでは流されてしまっていただろう。私は何て答えたのだろう?
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