第二衝突 【39ページ】

驚いた。偶然助けてくれた人が私達のキョーダイになる人だったなんて。梓という単語に反応して出た言葉、”椿”に驚いたように見えたけど気のせいだと思ったから。



『そうです。それから私の双子の妹、絵麻という子も家族になります。よろしくお願いします』



棗兄さん、か。何か雰囲気が椿兄さんや梓兄さんに似ていると思った。キョーダイだというのなら納得だ。それも三つ子だなんて。



「こちらこそよろしく。…っと悪いな仕事の名刺しか今なくて」



そう言われて渡された名刺には見覚えのある会社名が書いてある。



『あ』

「どうかしたか?」

『妹とよくするゲームの出版社だったので少し驚いちゃって』



そういえば最新ゲームを絵麻は徹夜してクリアしたって言ってたっけ。眼を真っ赤にしてたなぁ。ふふ、と思い出したら笑えてきた。



『妹がゲーム好きなんです。私も一緒にプレイしたりしますけど』

「本当か?ならサンプル送ってやるよ」

『ありがとうございます』



絵麻に言ったら喜ぶだろうなぁ。







「着いたぞ」

『ありがとうございました』



話していたらすぐにマンションに辿り着いた。いつの間にか震えは止まっていて、心が安心していた。



「お前、大丈夫か?」

『…大丈夫、ですよ。わざわざ送ってくださりありがとうございました』



ぺこりと礼をして車を見送る。どうやら彼は私のためにマンションまで運転してくれたようだ。また今度会ったら、何かお礼しないとな。迷惑かけてしまったし。
リビングへ行けば予想通り真っ暗で。みんな忙しいんだろうな。台所には右京さんの作ったであろう夕食が残っていた。



『…ん、おいしい』



きっとこのお味噌汁はずっと食べてきた絵麻の味がする。落ち着く、心の温まる味だ。早くお風呂に入って寝よう。今日遭ったことなんて忘れてしまえ。恐怖心なんて忘れてしまえ。何もなかったんだ。何事もなかったんだ。ただキョーダイに会っただけ。
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