第二衝突 【37ページ】

話そうと思っても、彼女は名前の姿を見つけると彼女は逃げてしまう。



『絵麻』

「ごめん、ちょっと用事!!」



せっかく絵麻に近づいてもすぐに走り逃げられてしまう。そんな不安定な心境は部活にもすぐ出てしまって。



「日向、タイム落ちてるぞ!もうすぐ大会なんだ、しっかりしろ!!」

『はいっ』



我武者羅に泳ぐだけじゃ速くは泳げない。それは分かっているけれど、だからこそ泳ぎに逃げてしまって。夢中で自主練習をしていたら、いつの間にか外は真っ暗でプールにいるのは私だけになっていた。温室プールの時計を見てみると短い針が9を指している。急いでプールから上がり、シャワーを浴びて着替える。



『はぁ…』



何をしていても頭の中には絵麻がいて。どうしても物事に集中できない。一人、大きなため息を零しながら校門から出た所、何やら視線という感じた。



『ん?』



後ろを振り返ってみるけれど誰もいない。



『気のせい、かな』



でも、耳を澄ませば自分のものの足音に混じって他の足音が聞こえてくる。怖くなった名前は走って近くのコンビニに入り込んだ。雑誌を読んでいるフリをしてチラッと外を見る。やっぱり誰かいる。電柱の陰に隠れている人が。どうしよう。どうしよう。こんなこと初めてだからどうすればいいのか分からない。こんなとき誰に助けを求めればいいのか分からない。まさか絵麻に助けを求めるわけにはいかないし。自然と脚は震えていた。コンビニについている時計を見てみれば、もう10時になっていた。早く帰らないと。でも足が竦んでしまう。あの人がマンションまで着いてきたら?エレベーターに乗り込んできたら?自分だけではなく他の人まで危険に晒すことになってしまうかもしれない。それは駄目。でも、じゃあ、どうやって、私は逃げればいいの?もう本気で走るほど体力も残っていない。怖い。



「梓?お前何してるんだ、こんな所で」



突然、知らない人に話しかけられた。誰、と思う前にまずは助けてもらいたい。きっとこの人も怪しい動きの外の男に気付いたのだろう。そして狙われているのを見つけた。助けようということでなければ声はかけないという随分自己都合に合わせた脳内であったが、客観的に考える余裕などなかったのである。だから咄嗟に知っている人物の名前を言った。



『椿兄さん』



”梓”と聞いたらもうこの人しか浮かばなかったんだ。
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