第一衝突 【2ページ】

「二人に紹介したい人がいるんだ」



お父さんが私たち姉妹に紹介したい人。綺麗な女の人は美和さんと言うらしく、女気がなかったお父さんが結婚したい相手らしい。



「名前ちゃんに絵麻ちゃんね。はじめまして」

『はじめまして』

「はっ、はじめまして」



彼女、朝日奈美和さんは有名なアパレル会社を経営するキャリアウーマンで、そんな彼女が所有する高級マンションに13人の息子たちがいると言う。お父さんに女子高校生の二人暮らしは危険だからとそのマンションで暮らさないかと提案した。案には美和さんも大歓迎で。むしろ女子高校生が男の人たちと暮らすほうが危険だと思うんだけど。私がおかしいのだろうか。家族が増えることを楽しみにしていた絵麻を知っていた私は何も言えなかった。お父さんと美和さんは別の家で一緒に住むらしい。新婚の邪魔をしようなんて思わないし、むしろ一緒に生活するほうが気を遣いそうだから仕方なく納得した。

絵麻は期待と不安で最近はずっとソワソワしている。私は未だに本心では引越しに反対している。とは言っても、決ったことだから口には何も出さない。それなりに大人にはなっているつもりだ。



「個性的な子が多いけれど、根はいい子たちだから。だから大丈夫だと思うわ」



美和さんが言っていた言葉を思い出す。思うって何ですか。保証してくださいよ、そこは。分かってる。引っ越したくないなんて私の我侭だ。私がいくら大人ぶったところで所詮は子供。まだ自立なんてできないし、お父さんに恩も感じている。だからある程度意見に従わないといけないんだ。そんな感じで私は大きな不安を抱えながら新居への道を歩いている。



「あだ名、ちぃ、くれぐれも注意するんだぞ。周りは男だらけになるのだからな」

「大丈夫だよ、ジュリ。これから兄弟になる人たちなんだから」

『でも男であることには代わらないんだからね?絵麻』



この双子の妹は危機感が足りていない。正直、新居に引っ越すのに反対したのは絵麻の貞操的な心配。だってこの子すっごく可愛いんだもの。それでいて流されやすいし。すっごく不安だ。そんな妹とは反対に私は男勝りで勝気。男友達といつもバスケやサッカーなどスポーツで遊んでいる。それに水泳で鍛えてるし。自分自身、自信がある。最悪急所を狙えばどうにかなるでしょ?なんて考えているくらいなんだから。まぁ、私なんかより絵麻にいくだろうけど。絵麻のほうが女の子らしくて可愛いもん。それは性格だけじゃなくて。たとえば髪型なんかも絵麻はサイドテールで女の子って感じだけれど、私は少し天然がかったショートヘア。柔らかい絵麻の体とは違って少し筋肉質な私の体。学校でも絵麻はモテてるし。…私もモテてるけど。女子に。男っぽいからか王子的な扱いをされている。顔だけはそっくりなんだけどね。どうしてこんなに違うのか…。



『ジュリ、絵麻のことお願いね?』

「もちろんだ。あだ名も気をつけるんだぞ」

『絵麻が隣にいるのに私に手を出す人はいないってー』

「お姉ちゃん、礼儀正しくするんだよ?私と二人だけじゃなくなるんだから」

『分かってるってー』



そんな会話をしていればすぐに私たちがこれから暮らすマンション、サンライズ・レジデンスに到着した。
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