第二衝突 【30ページ】

帰宅途中、観たいDVDがあったためレンタルショップに寄ってみた。



『…あれ、風斗?』



メガネをかけて帽子を被って顔はあまり見えないけれど多分間違いなくそうだろう。小さく呟いた言葉が聞こえたみたいで彼がずかずか歩いてきた。



「名前呼ぶんじゃないよ馬鹿女。他の客にばれたらどうするんだよ」

『あぁ、ごめんごめん』



別にファンでもなんでもないし、一緒にいる理由もないのでその場をすぐに離れた。けれどその後絵麻がやってきて風斗に話しかけてしまった。



「ったくあんたのせいでゆっくりみていられなくなっただろ。責任とってこれ全部借りてきてよね。僕、家で待ってくるから」

「え、あ、うん」



絵麻も絵麻で大人しく頷いちゃうし。あーあ。



『絵麻は悪くないからね。落ち込まないの』

「お姉ちゃん!?…うん、ありがとう」



風斗が頼んだDVDを半分ずつ借り、そのまま二人で並んで歩いて帰った。



『ごめんね、絵麻。私ちょっとトレーニングしたくて』



彼の部屋に足を運んだけれども彼はいなくて。悪いけれど朝倉風斗を待っている時間は私にはない。部活がない間の分しっかり走りこみたいの。基礎体力を上げるために。



「ううん、ありがとうお姉ちゃん。私、風斗君を待ってるね」

『気をつけるんだよ?ジュリ、よろしくね』

「大丈夫だって」

「まかせるのだ」



うーん、絵麻は心配だけどトレーニングしなきゃいけない。ジュリがいるから大丈夫かなぁ。彼、性格悪いというより捻くれてるのかな。テレビの前ではあんな綺麗な笑顔を見せていたのに。
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