第二衝突 【29ページ】
そしてそれは何の前触れもなく訪れた。
『え?…弥君、もう一回言って?』
「だからねー、今日は僕と一緒にお風呂に入ろう?」
ぶぶっと雅臣兄さんや右京兄さん、それに双子の兄たちは噴出し、昴兄さんや侑介は顔を真っ赤に染まっている。絵麻はと言うと苦笑いを浮かべていた。
『えーっと…弥君、今何歳だっけ?』
「んーっとねー、10歳!」
「ずっるーい★俺も一緒に入りたいーねぇねぇ俺と梓と弥と名前の四人で入ろうよ」
「椿。無茶言わないの」
「弥もだよ。無茶言わない」
椿兄さんが乱入したことによって話がややこしくなってくる。雅臣兄さんになだめられるも弥君は駄々をこねる。まぁ、一回くらいならいいかな。
『分かった。弥君、一緒に入ろう。ただし今回だけだからね?』
「わーいっ」
ブーブー文句言う椿兄さんは梓兄さんに任せます。
ポチャンといつもは水滴の落ちる音しか響かない風呂場に明るい声が響く。
『どこか痒いところはありませんかー?』
「ううんー、気持ちいいー」
弥君の髪の毛を洗ってあげる。小さい頃は絵麻と洗いあいっこしたから懐かしみながら泡立てる。
さすがに弥君の前で裸になるわけにはいかないからタオルを身体に巻いている。隠している面積は普段着ている競技用水着と同じくらいだし恥ずかしくない。
「おねえちゃん柔らかーいっ」
『あはははは、恥ずかしいよ。もー』
ぎゅーって抱きつかれるのは可愛いけれどさすがにこれは恥ずかしい。
「おねえちゃん、もう出ていい?」
『じゃあ10数えよっか』
お風呂から上がりリビングへ行くと雅臣兄さんが一番に口を開いた。
「ごめんね、弥が」
『いえ、楽しかったですし』
「でもゆっくりできなかったでしょ?」
『あははは』
そう言われてしまうと苦笑いしかできない。確かにいつもは使わない体力を使ったし、弥君の後で自分の体を洗ったため、長湯をしては逆上せてしまうだろうと短目に出た。
『………なーに侑介、もしかして一緒に入りたかった?』
未だに真っ赤な侑介を見つけ、暇つぶしとばかりにからかい出す。
「な、な、な、何言ってんだよ!!」
『顔真っ赤だけどー?誰で想像したのかなー?』
まるで椿兄さんみたいだ。一緒に暮らすようになったから椿兄さんの(悪)影響受けたんだ。うん、そういうことにしておこう。
「あだ名ちゃん、髪、きちんと、乾かさないと、痛んじゃう」
『わっ、何だ琉生兄さんか。びっくりした〜』
侑介で遊んでいたら急に髪を誰かに触られる感覚。後ろを振り返ってみると琉生兄さんがいた。
「ごめん…髪、僕が、乾かしても、いい?」
『もちろん。お願いしまーっす』
琉生兄さんの手が気持ちよくていつの間にか眠ってしまった。翌朝目が覚めたら部屋のベッドで眠っていたから多分琉生兄さんが運んでくれたんだろうな。仕事帰りで疲れてるだろうに申し訳ない。
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