第二衝突 【25ページ】

ザーザーと雨の音が鳴り響く。学校に置きっぱなしにしていた長い傘は絵麻に貸してあげた。って言うか侑介に頼んで絵麻とその傘で帰ってもらった。まさか二人して忘れてるなんて。



『折りたたみ折りたたみ…っと』



部活を終えた私は鞄の中に眠っている折り畳み傘を出す。



『うわぁ………かなり降ってるし』



電車ちゃんと動いてるかな。別に歩いて帰るのはいいんだけど、さすがにこの雨じゃびしょぬれになっちゃう。傘を差して一歩屋根のないところへと踏み出せば途端に大粒の大量の雨と強い風が私を襲う。



『わわわっ』



傘が飛ばないようにしっかりと掴み直して駅へ向かって歩き始めた。

電車はこの暴風雨のため動いておらず、駅は人でごった返していた。いつまで待てばいいのかも分からずに私は痺れを切らして家へと歩き始めたんだ。そんな時、微かに声が聞こえてきた。



『気のせい、かな』



こんなところに犬なんているわけがない。けれど今度は確かにキャンキャンと小さく吠える音が聞こえて。私は商店街の裏道へと足を踏み入れた。



『あ、いた』



小さな子犬が3匹。ダンボールに入って震えている。鞄から使っていないタオルを取り出すと一匹ずつ拭いていってあげる。そしてそのタオルをダンボールの下に敷いてやる。



『…これで大丈夫かな。ごめんね。飼っていいのか分からなくて』



自分はジャージを着て制服が濡れるのをカバーして子犬たちに傘を残して私は走った。全力で。





『はぁはぁはぁ…』



学校から家はとても近いとは言えないような距離で。少し歩いていたとはいえ、ずっと走っているのはかなり体力を使う。気がついた時には走るのを止めてしまっていた。家まで後、約10分くらい。私の前に知っている背中が映った。



『祈織兄さん』

「あれ、どうしたの名前。そんなに濡れて。ほら入って」

『ありがとう』



やった。これで濡れない。まぁ、もう手遅れなくらいびっしょりなんだけどね。



「傘忘れたの?電車は?」

『電車止まってて。傘は絵麻に貸しちゃってね。もう一本あったんだけどいろいろあって…』



チラッと祈織兄さんを盗み見る。こんな至近距離で彼を見るのは初めてだ。やっぱり綺麗な整った顔をしているなぁ、と思っているとあることに気づいた。彼の制服、肩の部分が濡れていることに。対照的に私は傘の中に身体がすべて入っている。こういうところが女の子にモテるんだろうな。さりげなく、かつ自然にエスコートしちゃってるもん。



『祈織兄さん、ありがとね』

「うん。ちゃんとお風呂にすぐに入るんだよ?体濡れてるでしょ。女の子は冷やしちゃ駄目だから」



うん、やっぱり紳士だ。
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