第二衝突 【23ページ】
どうしてこんなことになったのだろう。ただ絵麻と買い物したかっただけなのに。先程からずっと着せ替え人形かのように服を着ては脱いで着て、を繰り返している。
「んー、やっぱこっちのほうがいいかな」
いつもは絶対着ないような服ばかりを押し付けられて、試着室で着替えさせられる。
あぁ、こんなシフォンワンピースなんて絶対絵麻のほうが似合うのに。このミニスカも絵麻が履いたら可愛いんだろうなぁ。
『…あの、椿兄さん?』
「んー?」
『そろそろ終わりませんか?どれも私には可愛すぎますし。絵麻が着るならともかく、私なんかに着られたら服が可愛そうですよ』
ははっ、と自嘲を漏らす。そんな私に椿兄さんは顔を掴んで目線を強制的に合わせてくる。
「また言ってる」
『へ?』
「私なんかって名前の癖なの?君は君。絵麻は絵麻でしょ。どーしてそう自虐的になっちゃうかなぁ。それに名前は彼女に対して遠慮しすぎだと思うけど」
心の中をグサッとさされたような衝撃を受けた。彼を甘く見すぎていた。
『そうですか?椿兄さんの気のせいじゃ』
「そんなことないねー、だって梓も思ってるもん★」
今度は脅しかな。もう椿兄さんとの距離は5センチほどしかなくて鼻と鼻が触れ合いそうな位置だ。でもまだ言わない。まだ秘密。絵麻でさえ知らない秘密なんだから。椿兄さんに最初に言うわけにはいかないから。
『妹のことを想っているだけですよ。ただ、それだけです』
「ふーん…あ、やっぱり名前にはこれが似合うんじゃない?」
納得はしていないようだけれど、とりあえず見逃してはもらえるみたいだ。結局、椿兄さんが一番似合うからという理由でチェック柄のミニスカートを購入。というか、椿兄さんがプレゼントしてくれた。贈り物なら履くしかないし…。
「お姉ちゃーん」
「梓〜!!」
駐車場で待ち合わせをしていた為、二人はもう待っていた。梓兄さんをいつ戻り抱きしめて椿兄さんは車へ乗り込む。そして私もその後を続いて乗り込み、買い物は終了となった。
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