第六衝突 【197ページ】








『…馬鹿じゃないの』



何歳だっつーの。自分のロッカーを見ながら呟く。落書きされているのは当たり前になってしまった。けれど内容が内容である。馬鹿だの阿呆だのブスだの、小学生かっつーの。祈織様に近づくなとかも書いてあるし。前に思いっきり”祈織兄さん”って呼ばなかったっけ。義妹だって説明したはずなんだけど。書いている人の語彙力が心配になるレベルかもしれない。

基本的に大学ではヘラヘラしている私。そんな私でも一回だけ怒ったことがある。大学で講義を受けて、その後プールに来て、終わったら椿とのデートとなっていた。大学ではそんな可愛い格好で来ていないから着替え用に椿が買ってくれた彼好みのワンピースを持ってきていた。それを狙われてしまった。鍵の無いロッカーでは必需品はいつも身に着けているものの、さすがに服までもプールサイドまで持っていくわけにはいかない。心配だったけれど、置いておいたんだ。練習後、椿とのデートを楽しみにロッカーを開けた。そこに飛び込んできたのはボロボロになった服で。大人しくしていた私もついにキレた。逆ギレさせる結果になろうとも怒ったんだ。



『はぁ…痣になってなくってよかったけどさ』



殴られたり、蹴られたりしても痣になっているのは少なかった。せいぜい青痰くらいだ。内出血だとでも言えば誤魔化せるレベルの。

今日もまた私は練習をする。こんなことされてもやっぱり水泳は好きなんだもん。大学も水泳の推薦で入っているため、止められない。

少し油断していたのかもしれない。旅行に行って浮かれていたのかもしれない。馬鹿だったんだ、私は。



『んんっ!?んんんー…』



油断しちゃいけないってサインは出ていたのに。

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