第六衝突 【194ページ】
旅行2日目。私は椿に誘われて離島へと来ていた。穏やかな時が流れる、そんな時間。この丘の上から見る景色はお気に入り。綺麗な海が一望できる、誰にも邪魔されることのないスポットだ。
『ん?どうしたの?』
ふと隣からの視線に気がついた。椿に目をやると私をじーっと見つめていたことに気付く。
「んー?俺の彼女はかーいーなーって★」
『………』
「ちょ、無視はやめて!!」
嘘泣きし始めた彼を放って私は海へとかける。足首辺りまでを海水につけたくらいで椿を呼びかけた。
『椿ー、一緒に海入ろうよ!気持ちいいよ!!』
「しゃーねーなー」
なんていいながら椿の顔は満面の笑みだ。あぁ、こんなのだから梓兄さんに椿の扱い上手くなったねって言われちゃうのかな。上手にならないと面倒なんだもん。彼氏に言う言葉じゃないけど。
『…セクハラ反対!!』
少し物思いにふけっていたら、いつの間にか胸元にある私じゃない手。ここにいるのは私と椿しかいないから、犯人は決ってる。そもそもセクハラなんてしそうな兄弟は要兄さんか椿の2人くらいだ。
「いってぇー…いいじゃん。ここには俺達2人しかいないんだぜ?」
『駄目に決ってんでしょ!』
確かに誰もいないけれど。こんな明るい所で日の昇っている時間に行為に及ぶのは嫌だ。激しく遠慮したい。
そんな感じのまま島へと戻るとバーベキューの用意がされてあった。今から食べるところだから丁度タイミングが良かったらしい。…準備一つせずにすみません。お肉、おいしかったですよ。結構値の付くものを買っていたようなので特に。旅行という非日常が終わりを告げて、私はまた否応なく日常に戻された。
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