第六衝突 【191ページ】
大学が始まってからの私は結構忙しかった。高校のときよりもレベルの高い勉強。部活なんて生温いようなものじゃない水泳。推薦で入ったからというのもあるだろうけど、かなりキツイ…。
「お姉ちゃん。城智大学には慣れた?」
『んー…まだ、かな。大学内広すぎて迷子になるし。絵麻は?』
「私もまだちょっと高校気分が抜けてないかも」
講義が入っていようが入っていまいが毎日毎日朝から大学へ。帰ってくるのは高校で遅いと言っていた時間に帰ってこれればまだマシなほうだ。そんな生活を始めてから、椿から会うこともかなり減った。元から生活リズムが特殊な椿に私の予定を合わせるようにしていた。けれど私自身もまともに時間を取れなくなって、椿も声優業でさらに人気となり顔を合わせても業務的な言葉しか発していない。
『…ふぁ。ごめん、そろそろ寝るから部屋に戻る。ごめんね絵麻』
「ううん。引き止めちゃってごめんねお姉ちゃん」
もっと話したかったろうに。絵麻は我侭を言わない。申し訳ないな、と思いながらも眠気に勝つことなんてできず、言葉に甘えて部屋へと直行させてもらった。
翌朝、目を覚ました私は驚いた。何やら暖かい気がするなと思っていたら、椿に抱きしめられていたのだ。しかもばっちりと寝顔を見られて。
「おはよ。名前、よく眠ってたなー」
『…え』
寝ぼけた頭は中々活動してくれない。目をぱちくりさせながら椿を凝視する。
「名前ー?起きてる?まだ寝ぼすけ中?」
『……な、んで椿がここに?』
「鍵くれたのは名前でしょー。それに最近会えてなかったし。名前不足なんだもん!今日は学校休みっしょ?イチャイチャしよー!!」
『嫌。まだ眠い…』
「えー、でも俺、名前のかーいー寝顔見てたら我慢できそーにないんだよねー★」
名前の身体を反転させて、熱を持ったソレを押し付けてくる椿。
『最っ低』
一蹴し、名前は今にも襲い掛かってきそうな椿を無視して眠りについた。
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