第六衝突 【189ページ】
翌日、昼過ぎあたりからようやく動けるようになった私はリビングでくつろいでいた。椿兄…椿も一緒にリビングへ来て、特に何の目的も無く、右京兄さんを手伝う絵麻と一緒に家事をしながらのんびりとした一日を過ごしていた。が。そう穏やかな時間は長くは続かなかった。ソファーに座っている要兄さんと椿にお茶を出しに行った私。
「名前ちゃん、つばちゃんの相手大変そうだねぇ。独占欲強いし。毎日疲れてるんじゃないの?」
『え?』
「こーこ。痕付けちゃって。やるねぇ」
何やら感心した様子で耳の裏当たりを指差す要兄さん。それが何を指すのか分かった私はきっと顔を真っ赤に染めているのだろう。椿兄さんを睨んでみたけれど、効果はまるで無かった。それどころか知らん顔をしている。
「つばちゃんなんてやめて俺にしない?あだ名ちゃん」
「ちょっとかな兄ー。俺のかーいー名前を口説かないでよー」
『右京兄さーん。朝日奈家の二大問題児たちがちょっかいかけてきまーす』
こうすれば大人しくなるのなんて知っている。まぁ真後ろにフライパンを持ち上げた人がいれば誰だって大人しくなるものだろうけれど。本当は梓兄さんも呼んで椿をしかってもらいたかったけど、彼は今、仕事に出かけてしまっている。だから右京兄さん一人だけを呼ぶことになった。絵麻がキッチンで何やら真剣に料理してくれていて助かった。聞こえていたら恥ずかしいどころの話じゃないし。家出するレベルだよ、それだったら本当。
「名前ってばひっでえよなー。かな兄はともかく俺まで邪険にするなんてっ!!」
『日頃の行いのせいじゃない?』
「あらら〜手厳しいね妹ちゃん」
『甘やかしたら面倒だから』
「酷いぞ名前ー!!」
『はいはい』
名前が椿を適当にあしらう姿はさすがというか何というか。けれども互いを想い合っている気持ちは見て取れる。きっとそれが二人の距離なのだ。
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