第六衝突 【187ページ】



『あ、見て見て!この魚美味しそう!!』

「魚を見る基準は其処なのかよ名前〜」



私たちは今、都内にある有名な水族館に来ている。所謂デートってやつ。きちんと私から誘ってね。今までずっと椿兄さんに誘われっぱなしだったから。



『え、普通じゃないの?』

「普通は小さい!可愛い!!じゃないの?」

『私がそんなこと言うとでも?』



水族館って結構人の集まる場所だと思うのだけれど、椿兄さんはいつも通り、変装なんてしていない。人気声優なんじゃないの?とか心配するけれど彼自身が気にしていない様子なので私も気にしないことにした。



「名前ってばはしゃぎすぎ〜」

『え、あ、ごめん。水族館って学校行事でしか来たことなかったからさ』

「いいけどねー★けど、迷子防止のために手を繋ぐこと!!」

『恥ずかしいじゃん!!』

「ダーメ。もう決ったの。それにデートの雰囲気でるっしょ」



確かにそうかもしれないけれども。恋人繋ぎーと言って指と指を絡ませるのはかなり恥ずかしい。がっちりとホールドされてしまって、手汗がすごく気になっちゃうし。



「名前っ〜もう少しでイルカショーだってよ!見に行くよな!!」

『うんっ行く!』



美味しい、美味しくない、という味覚を抜きにしてイルカは私の好きな魚ランキング上位だ。ちなみに後はペンギンとカメとサメ。イルカの泳ぎ方が綺麗なんだよね。あんな風に泳げたらなぁなんて思う対象だ。ショーでは空中にある輪をいともたやすく潜るイルカたち。綺麗にそろっているところがまたすごい。



「すごかったな名前!!」

『うん!本当すごかったね!!』



イルカショーが終わってからの椿兄さんのテンションはさらに高かった。いつも高いのだけれど、それ以上っていうか。



「あっ!お土産買ってこようぜ!んでもってお揃いのもの買っちゃお〜★」

『いいね〜賛成!何買う?キーホルダーがいいかな?絵麻にもなにか買って帰らないと!!』

「ほんとに名前は絵麻好きだな〜」

『椿兄さんも梓兄さん大好きなくせに〜』

「ばれちゃった★」

『隠しもしてないでしょ。別に気にしてないからいいけど』



梓兄さんに嫉妬したら無駄に苦労するだけだ。私も絵麻大好きだし、お互いに双子の妹、弟を大事に思うのって大切なことだと思う。結局イルカのキーホルダーを私たちはお揃いのお土産として買って、他の人たちにはクッキーを買った。絵麻にはペンギンもマグカップも買って。椿兄さんも何やら梓兄さんに買っていた様子だった。
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