第六衝突 【185ページ】

名前が目を覚ました時にはお昼過ぎというより夕方に近い時間だった。よく寝たものだ。

椿兄さんの胸元から抜け出して服を着ようと身体を動かせば、腰が激痛を訴える。喉が渇いたし、水を飲みたかったのだけれど、立って歩くのにはまだ時間が必要なのだろう。私は諦めてもう一度布団を被りなおし、椿兄さんのもとへと戻った。

…綺麗な顔作りをしている椿兄さん。女の子達が騒ぐのも分かるかもしれない。ただこの部屋を見たら幻滅しそうだけれど。つい悪戯心が働いて、頬をつんつんと突いてやる。肌はすべすべしてるし、私より綺麗なんじゃないの?どういうことよ、これ。



『むー…』



若干羨望を含んだ瞳でさらに頬を突く。と、急にその動きは止まった。と言うより止められた。椿兄さんによって。



『お、起きてたの?』

「うん。名前がかーいーことしてるから寝てるフリしてたー★」

『忘れて!今すぐに!!』



恥ずかしい。まさか起きてるなんて思っていなかった。入る穴があったら入りたい。なんて思ってみても穴なんてあるはずもない。

椿兄さんにぎゅっと抱きしめられて、素肌と素肌が触れ合って気持ちいい。トクントクンという彼の心臓の音が私を落ち着かせてくれる。



『今日はデートしようって椿兄さんを誘うつもりだったのに…』



事前に休みだってことは調査済み。だから時間に余裕がある私が合わせて遊びに行こうと思ったのに。もうお昼だし、そもそも私が動けそうも無い。



「あー悪かったって。だから今日は俺の部屋でデートな★」

『仕方ないなぁ』



いつも椿兄さんから誘われてるからたまには私からデートに誘おうと思ったのに。また次の機会にと思って、その日はずっと彼の部屋の中にいた。
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