第五衝突 【180ページ】
「と、言うことは…」
キラキラした瞳で見つめてくる椿兄さん。いや、まぁ期待に沿えるとは思うのだけれど恥ずかしいからやめて欲しい。
心臓が煩い。ありえないほど緊張している。多分、顔は恥ずかしさで真っ赤になっている。いつから私はこんな乙女になったのだ。
『好きです、椿兄さん。兄としてでではなく、一人の男の人として…』
蚊の鳴くような小さな声だったと思う。けれども必死の思いで搾り出した声だ。それを言い切る頃には私は椿兄さんの胸の中にいた。
「ま・じ・でー?ちょーうれしー!!俺、感激!! 俺も大好きだぞ名前!!」
『ちょ、椿兄さん苦しいっ』
ぎゅうぎゅうと押さえ込まれて息ができなくなる。それさえも幸せに感じてしまう私はやっぱり重症だ。何とか椿兄さんを引き剥がして、呼吸を整える。そんな私の耳元で。
「名前、俺と付き合ってください」
真面目な妙に艶っぽい声を出すものだからたまったもんじゃない。声優の本気ってやつですか?心臓に悪いです、割と本気で。
『…よろしくお願いします』
次は私から椿兄さんに抱きついた。真っ赤に染まっているであろう顔を隠すように胸に埋めて。
「…ったく見せ付けやがって」
「まぁ、よかったんじゃないの」
そんな私達に半ば呆れ顔の二人の兄達。…う。とてつもなく恥ずかしい。もう恥ずか死んでしまいそうなくらい。
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