第五衝突 【175ページ】

無事に受験を終えた絵麻と私はデパートに来ていた。約束していたのだ。受験が終われば一緒に出かける、と。絵麻が希望したのは一緒に買い物したいというものだったので、今現在一緒に買い物をしている。



『絵麻、これなんかいいんじゃない?』

「ほんとだ可愛いっ、お姉ちゃん試着してくるね」

『うん。私はもう少しこの辺探っておくよ』



絵麻に渡した春物のシフォンのワンピース。花が全身に散りばめられていて裾がふわりとなっていて、かなり女の子らしいものだ。私には縁の無いような。

私も何着か服を買っておかなければならない。さすがに大学に毎日ジャージはないだろう。しかも有名大学だし。そんな服を着ている女子大生なんて聞いたことが無い。これなんてどうだろうと手にとっては元のあった位置に戻す。また手にとっては元の位置に戻す。それを何度か繰り返しているうちに絵麻に呼ばれる。



「どう、かな?」

『いいじゃん!すっごく可愛い!さすが絵麻!!』

「本当?なら買っちゃおうかな。あれ、お姉ちゃんその手に持ってるのは?買わないの?」

『いやー、ちょっと可愛すぎるかなぁって』

「いいと思う!すごい素敵!お姉ちゃん着てみなよ!!」

『え、ちょ、絵麻っ』



そのまま試着室に入れられてしまった。諦めて服を着る。絵麻は一度決めたことには頑固だし。別にぎりぎり着れなくもないくらいのものだから大丈夫。



『絵麻ー、どう?』

「お姉ちゃん可愛いよっ!」

『本当?可愛すぎない?』

「ううん。そんなことないって」

『んー…』



とりえず買っておこうかな。絵麻の服を借りるわけにもいかないから。そんな感じで絵麻と久しぶりの姉妹デートを楽しんだ。



「おっかえりー★」

『ただいま椿兄さん』

「ただいま帰りました。って何してらっしゃるんですか?」



家に帰ったら珍しく兄弟が大集合していて。しかも棗兄さんと昴兄さんは腕相撲してるし。周りに兄弟達が群がっている状態。…本当、何してんの。



「あぁ、今ね朝日奈家腕相撲大会が開かれてるんだよ。何でも右京兄さんが温泉旅行へのペアチケットを当てたらしくて。優勝者に贈られることになったんだ。ちなみに雅臣兄さんと右京兄さんは不参加だよ」



解説をわざわざありがとう祈織兄さん。んー、じゃああれか。みんな絵麻と一緒に行きたくて頑張ってる、と。



『私も参加できる?』

「大丈夫だよ。次に弥と対戦ね」

『うん。わかった。ありがとう祈織兄さん』



絵麻は、と聞いてみたけれど遠慮するよと返事した。まぁ、彼女に力があるなんて思えないし、出たところですぐに負けてしまうだろう。絵麻と一緒に温泉旅行!と意気込んで弥君と机を挟んだ形で座る。ちなみに私は女子だから、ということで皆は4回勝たないといけないところ、3回勝てば優勝としてもらった。

ゴーという声と共に力を入れるのだけれど、弥君は本当に力を入れているのだろうか、という程度。すぐ勝ってもいいのだけれど泣いてしまいそうだし。適度に力を抜きながらも弥君の腕を机に倒した。



『よっし!』



まずは一勝。それからトーナメントは進んでいって。次の対戦相手は椿兄さんと決った。うわ、結構強敵っぽいんだけど。



「悪いけど、名前でも容赦しないよ?」

『いいよ。力抜かれるの嫌いだし』



学校で一時期流行ったことがある。男子の中で行われるそれに私も参加していたのだけれど。はっきり言って勝てたのは数回。運動部には勝てないが、文化部には負けないという感じだった。ずるいよね。男だからって力強いんだもん。手を机の上に置いて、椿兄さんの手を掴みあう。



『……っ』



角張った大きい手。骨格の分かる長い綺麗な指。どれもが私と椿兄さんの違いを示しているようで。今まで友達とこうしてもなんとも思わなかったのに。顔に熱が集まるのが分かる。それとほぼ同時に試合が始まったから、力を本気で入れてるから顔が赤いのだと誤魔化して戦った。…負けちゃったけど。強そうな棗兄さんは一回戦で昴兄さんに負けて。侑介も強かったのだけれど昴兄さんに負けて。優勝候補だった昴兄さんは不意を突かれて要兄さんに負けて。結局、椿兄さんと要兄さんの一騎打ち。優勝者は要兄さんと決まった。
|
[Back][Top]
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -