第五衝突 【174ページ】
棗兄さんの腕は完全に治って。もう彼の家に通うことはなくなった。そう思えばすぐに絵麻と侑介の受験当日だ。
『はい。絵麻、侑介。頑張ってきてね』
この日くらいお弁当を作りたくて。ランニングを早々と切り上げて台所へ立った。朝食を作っている右京兄さんの邪魔をしないように、絵麻の好きなおかずを中心に作っていく。タコさんウインナー、甘めの卵焼き。いつも絵麻が作ってくれていたお弁当に入っていたおかずたち。侑介のお弁当には可愛すぎるかな、なんて思いながら。
「ありがとうお姉ちゃん」
「おう、サンキュー」
激励を送るのは何も私だけではない。右京兄さんだって昨日からかなりはりきった食事を作っていたし、もう仕事に行ってしまった雅臣兄さんや椿兄さん、梓兄さんだって二人を応援してから出かけて行った。祈織兄さんにいたっては花を贈っていたし。…侑介には似合わなすぎて笑えたけど。
『ファイトだ。私の大切な妹と弟よ』
同い年でも一応生まれたのは私が一番。だから表記的には妹と弟となる。絵麻となんて数分しかかわらないのにね。
『んー…私も部活にでも顔出そうかな』
推薦で大学の行き先が決ってからときどき顔を出していた。ずっと泳がないでいるとやっぱり遅くなっちゃうし。後輩達の指導をしつつ、私も泳がせてもらおっと。
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