第五衝突 【171ページ】

告白されてから、一人で棗兄さんの家に行く度胸なんてなくて。家を出ようとしているときに丁度椿兄さんと梓兄さんがいたのでそのまま一緒に向かうことになった。



「あぁ、遅かっ………」



ドアを開けて棗兄さんは固まる。仕方ないだろう。私しかいないと思っていたはずだから。まさか兄がいるだなんて考えもしなかったのだろう。



「ん?どうしたの棗」

「名前がお前に構いきりなんてお兄様はゆるさねーからな」

『あはははは…お邪魔しまーす』



彼は呆れながらも部屋に通した。わざわざ自らの家にやってきた兄を追い出すことなど出来なかったのだろう。

溜まっていた洗濯物を洗濯機に入れ、スイッチを押してから掃除にかかる。終わった頃には丁度出来ていて、ハンガーにかけながら外に干していく。皿を洗いながら料理を開始しようかと思って台所へ行くと、使ったであろう皿は綺麗に洗われていた。



「梓と二人で名前の手伝いしたんだー★ほめてほめてー★」

『あぁ、ありがとう椿兄さん梓兄さん』



相変わらず三つ子の兄二人は弟をからかっているようだ。可哀想に。哀れみの視線を一瞬送ってから私は料理に取り掛かった。どうせ椿兄さんたちも食べていくつもりなのだろう。来る途中に材料をきちんと買ってきた。おそらく足りるはずだ。なんて思いながら私は冷蔵庫を開けた。



「いいよなー、棗は。毎日こんな美味い飯食ってさ」

「椿。お前らだって妹のご飯を毎日食べてるだろ」

「最近は京兄の作った料理だもーん。名前は棗のところに行ってるし、彼女は受験生だから勉強優先させてるし」



そんな会話を聞いていたたまれなくなってくる。右京兄さんのほうがはるかに料理スキルは上だというのに。どうして私の手料理の方が良いのか理解できなかった。



『はははっ』



気がつけば笑っていた。何故だろう。三つ子の兄たちの仲の良い姿を見たからなのだろうか。結局原因は分からなかったけれど、楽しい食事の時間だった。それを片付けて四人でゲームを始めた。対戦型のテレビゲームを。しかも優勝者と私はデートするという条件で。どうしてこうなったのかは分からないけれど。私、勝ってもなにもないわけ!?ひっどーい。後で何か強請ろうっと。



『兄さん達弱すぎ…』



まるで相手にならなかった。まだ侑介の方が手ごたえがあるんじゃないかってくらい。梓兄さんはともかく、椿兄さんは結構ゲーマーだし、棗兄さんもゲーム会社に勤務しているだけあって強いんだけど。私の得意な種類のゲームということもあってか、私の圧勝。



「名前強すぎー!!」

「3人がかりでも相手にならないなんて」

「ありえねぇだろ…」

『あははー、今なら絵麻にも勝てそう。受験で最近してないだろうし。私が勝ったからデートはなしだね』

「ええー!!もう一回もう一回!!」

『いいけど、また私が勝っちゃうよ?』

「やめとけ椿」

「やめとくべきだと思うよ。僕達三人揃ってコテンパンにされちゃったわけだし」



ということでどこから出て来たのか分からないデートの予定は消え去った。

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