第五衝突 【165ページ】

木についていた葉が全て散り、吐く息が白くなりだした今日この頃。私は街で棗兄さんと待ち合わせをしていた。送ってもらったゲームの攻略法を教えてもらいに。絵麻がいればどうにかなるのかもしれないけれど、受験生にゲームなんて進められるわけないし。一人でプレイしていたのだけれど、なかなか上手く進まずに四苦八苦していた。



「名前」

『棗兄さん』

「遅くなって悪い。仕事でな。立ち話もなんだしカフェにでも行くか」

『はーい』



カフェの中は暖かくて、着ていたコートを脱ぎ制服姿となる。あまりオシャレなカフェとは似つかないかもしれないけれど、まぁいいかな。棗兄さんは気にしてないみたいだし。さっさと注文して本題へと入った。



「で、どこで躓いたって?」

『ここです。ラスボスにつく前にどうしても倒されちゃって』

「あぁ、そこか。レベルはいくつで突入したか分かるか?」

『確か70前後のパーティーだったと思います』



棗兄さんと話していると、ねぇあの人かっこよくない?みたいな会話が聞こえてくる。でもって私と彼でカップルに見えるらしい。それはそれで恥ずかしいです。。。



『あ、会計は私が』

「いいんだよ。兄貴の面子を保たせろ」



自分から相談を持ちかけたし、前も奢ってもらったから支払いくらいしたかったのだけれど。そう言われて財布を取り出そうとしていた手を止められた。言葉はぶっきらぼうだけど優しいんだよね棗兄さんは。



「ところで昴の様子はどうだ?」

『昴兄さんですか?うーん…』



確かにたまに一緒に走っているけれど。彼と接する機会なんてそれくらいしかない。絵麻の方がまだ接しているだろう。



「まあいい。椿と梓の様子はどうだ?」



何て返事をするのがベストなのだろうか。これはこれで困る質問をされてしまった。普通、というのも違う気がするし。かと言って詳しく話すわけにもいかないし。



「何かあったのか?」



困惑している私の顔を覗き込む。



『…ううん。何にもないよ』



これは私の問題だ。黙っておくのが得策だと私は考えた。



「…そうか、何かあれば遠慮なく相談しろよ」

『うん。ありがとう棗兄さん』



本当のお兄ちゃん、みたいだ。
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