第五衝突 【160ページ】
受験前は控えていた早朝のランニングを私はスタートさせていた。時々時間が合えば昴兄さんと一緒に走ったりしていた。要兄さんもたまに走っているので多い時には三人で走る。今日は要兄さんはおらず、私と昴兄さんの二人きり。
「はぁはぁ…速いか?」
『い、いえ。大丈夫、です……はぁはぁはぁ』
肩で息する私。こんな状態じゃ説得力ないかもしれないけれど。少しの間走っていなかったから体力が落ちちゃったみたい。
「少し休憩にしよう。そこのベンチに座っていてくれ」
『…分かり、ました』
しばらくすると昴兄さんがスポーツドリンクを買ってきてくれた。こんな気遣いが私以外の女子にもできればモテると思うんだけどなぁ。昴兄さん、未だに絵麻と話す時挙動不審になったりしてる時があるし。私に大しては女子だと意識してないんだろうけど。
『ありがとう昴兄さん』
「あぁ」
また私達は走り出した。すると見覚えのある姿が現れる。
「名前と昴…!?」
「なつ兄!?」
『棗兄さん…!?』
反対側から走ってきた彼と私達は対面した。
「…お前達、一緒に毎朝走ってるのか?」
『たまにはね。エントランスとかエレベーターで会った時だけだよ』
「そうか」
「…行くぞ」
『え、ちょっと昴兄さん』
棗兄さんと軽く話していたのだけれど、昴兄さんに腕を引っ張られてマンションまで引き摺られるようにして帰ってきた。
『昴兄さん?』
「あぁ、悪い」
言いたいこと、聞きたい事はあったけど、今聞いても無意味な気がして口を閉ざした。
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