第五衝突 【158ページ】
まぁまぁな手応えを受験に感じながら家に帰ると、マンションの入り口のところでダンボールに乗せて捨てられているジュリが目に入った。
『ジュリ?』
まるで捨てられているかのようなそれに驚く。慌てて抱きしめるが、冬眠しているだけのようだ。絵麻が見つける前に見つけれて良かったと思う。一体どうして、という疑問を抱きながらリビングへ入るとさらに驚愕した。
『…何、このケチャップ』
文字通りリビングはめちゃくちゃになっていた。壁や床、ソファーや窓にまでかかっているケチャップ。そして大きいテレビは画面が割れてしまっている。何故か髪は乱れて顔や手には傷がある棗兄さんと右京兄さん、椿兄さんと梓兄さん。一体何があったのか。
「名前!おっかえり〜★」
「お帰り。どうだった?」
「お帰りなさい。おや、そのリスは…」
『ただいま。いやー、外に捨てられてるみたいだったからさ、回収してきた。で、誰がやったんですか?』
笑顔で言えば効果覿面だろう。
「え、そのリスって死んだんじゃ…」
『死んでません。寒くて冬眠しちゃっただけです。このまま暖めれていれば動き出しますよ』
あぁ、なるほど。皆はジュリが死んでしまったと勘違いしたんだ。だから埋葬でもしようとしたって感じかな。その時、後ろからリビングのドアが開き、祈織兄さんが入ってきた。
「あ。そのリス、そこにいたんだ」
『祈織兄さん。知ってるの?』
「うん。庭にでも埋めようと思ったんだけど…」
はーい犯人決定ー☆まぁリスの冬眠のこと知らなければ分からないし、埋めようとしてくれたのは優しさからだから何も言えないけど。
『祈織兄さん、実は死んでないよ。リスって冬眠するんだ』
「え、そうなの?」
『うん』
「そっか。ごめん」
祈織兄さんは勘違いしていただけだし、仕方がないだろう。
『で。どう説明するんですか絵麻に』
ジュリは目覚めれば怒り心頭だろう。そこから妹に漏れる可能性は高い。まさか本当に捨てただなんて言えないし。
「…プロに頼もう」
呟いたのは梓兄さん。そのまま携帯を取り出してどこかに電話し始めた。
『…右京兄さん。とりあえずリビング掃除しましょ』
皆が帰ってくる前に掃除しないと。早く終わらせて夕食を作らないといけないし。
『ほら、椿兄さん棗兄さん祈織兄さんも掃除しますよー』
右京兄さんはテキパキと掃除する準備を進めている。私も雑巾を取り出して窓を拭き始めた。何とか絵麻が帰って前に掃除を終えることができた。そしてその内に一つの物語が誕生していた。プロと言うのはどうやら光兄さんだったようだ。
『絵麻。お帰りー。あのさ、ジュリなんだけどリビングにいたのを忘れられて暖房切られたから冬眠しちゃったみたい。もう少しで目覚めると思うんだけど』
「ただいまお姉ちゃん。分かった。ありがとう。で、どうだった?受験のできは」
『んー、まぁまぁかな?多分大丈夫』
大まかな話はこんな所。絵麻よりも私が先に見つけたからジュリの機嫌さえどうにかすれば大丈夫だろう。後で飴でもあげておこう。もう遅い時間のため今から食事作りではお腹がすくだろうということでファミリーレストランでの夕食となった。
真実を言っちゃえば弥君が一人でリビングを出る時に暖房を切って、ジュリが動けない状態になってしまった。扉の近くにいたジュリを昴兄さんがやってきてドアで叩きつけ、雅臣兄さんを呼びに言っているところ、椿兄さんが悪戯でケチャップをつけたらしい。そして皆がリビングから出て行った後、棗兄さんがやってきて。暖房をつけたため、動けるようになったジュリは棗兄さんを襲った。棗兄さんが殴ってしまい、慌てているところで梓兄さんと右京兄さんがやって来た。犯人探しの為、模擬裁判をしていた途中で祈織兄さんがやってきて花壇に埋めようとしたらしい。…ジュリにとって厄日だったんだね、きっと。
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