第五衝突 【156ページ】
それから腕を引っ張られて、なぜか私は保健室に連行された。
『椿兄さん、梓兄さん?』
「足、ダンスの時踏まれてたでしょ」
「さりげなく庇って歩いてるし。先生に診せなかったの?」
『…う』
だって苦手なんだもん。薬とか湿布の臭いって。袴の下は素足で、草履だけを履いている状態だったからすぐに脱がされてしまって。足をまじまじと見られて恥ずかしい。
「赤くなってちょっと腫れてんねー」
「湿布どこにあるかな」
『だ、だめ!』
湿布なんて貼ってしまえば草履なんて履けなくなってしまう。
「…分かった。代わりに塗り薬塗るから」
「終わったらちゃんと湿布貼るんだよ?」
『はーい』
冷凍スプレー?か何か良くわからない冷たいスプレーをかけられて、めちゃくちゃに塗り薬をたっぷり塗られて解放された。
『………足くっさ』
別にいつも臭くないというわけじゃないけれど。今はダントツで臭かった。
足を固定したのが良かったのか、痛みは大分引いていて。部活の劇も何事もなく無事に演じきることができた。
『…ふぅ』
舞台から降りて、自由の身となった私は絵麻のクラスにまた寄ってみた。すると先程は会えなかった侑介の姿があった。髪の毛をセットしてタキシードを着ている侑介。
『あっはっはー、侑介、最高!!』
「うっせー笑うな!!名前!!」
笑ってしまっても仕方ないだろう。普段のイメージからは想像できないような格好だし。中には椿兄さんと梓兄さんもいて。この人たちは暇なのか、と思ってしまう。そんな事は置いておいて、侑介に注文する。実は昼食を抜いちゃっておなかすいたんだよね。せめて軽い軽食でも食べないと。
「名前、ちゃんと湿布張ってんだなエライエライ」
『椿兄さんは私を何歳だと思ってるの』
「でも安心したよ。大したことなさそうで」
「そーそー。劇もむっちゃおもしろかったし」
「あぁ。あれはよかったね」
『本当?ありがとう2人とも。椿兄さん、演技指導してくれてありがとね』
「どーいたまして★」
シフトがもう終わる頃だった絵麻も加わって、そのまま文化祭が終わるまで4人でお店を見て回った。
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