第五衝突 【155ページ】

文化祭当日。二つの劇に出る私はかなり忙しかった。早く集まって事前練習するし、着替えたり髪型をセットしたりと結構準備に時間がかかる。クラスの方の劇は1番目で。ブザーの音と共にスタートした。特に問題なく進んでいき、劇も終盤。たまたま見た客席に見覚えのある人たちが視界に映った。…何で椿兄さんと梓兄さんが。大方絵麻あたりが呼んだのだろうけど。私も日付教えちゃったし。たまたま仕事の空いていた2人が来たという所なのだろう。最後はお姫様役の子とダンスをすればいいのだけれど、これがかなり難しい。



『………っ!!』



タイミングが合わずに、高いヒールで足を踏まれてしまう。けれども何とか表情に出さずに最後まで演じきった。

舞台袖にはければお姫様役の子が駆け寄って謝ってきた。



『大丈夫大丈夫。大したことないって』

「名前君、本当ごめん」



涙目になっちゃってすごく可哀想だ。大丈夫だと、強調して着替えに向かった。

部活の方の衣装に着替えたら、私は絵麻のクラスへと足を運んでいた。だって紳士カフェをするんだって言うんだもん。侑介の紳士姿笑いに行かないとでしょ?でも辿り着いた先に私は驚いた。



『絵麻、ちょー可愛い!!』



聞いていたのは執事喫茶。確かに執事はいる。けれどもメイドさんもいるのだ。



「ありがとうお姉ちゃん。お姉ちゃんもすっごくカッコいいね!」

『ありがとー。それにしても何でメイド?』

「数が足りないから女子もってことで、執事メイド喫茶になったんだって」

『あぁ、なるほど』



お姉ちゃん、注文は?と可愛く聞くので、紅茶でと答える。注文を届けてもらうまでの間、侑介の姿を探したのだけれど見つからない。休憩中なのだろうか。それとも裏にいるのかは分からない。キョロキョロしていたら、先程舞台から見た人たちに見つかった。



「あっれ〜名前じゃん★」

「名前、お疲れ様」

『ありがとう梓兄さん。それから椿兄さん』

「さっきとは違う衣装なんだ?」

『先程のはクラスの出し物だからね。午後から部活の方の出し物もあるんだ〜』



王子様の衣装からは一転、今度は幕末が舞台のため、袴をはいて、刀を腰に差して、まるで武士のような格好をしている。髪の毛は丁髷にするわけにはいかないからポニーテールで許してもらった。



「名前、ちょーかーい★」

『男装してる身としてはカッコいいって言ってほしいな』

「ちゃんとカッコいいよ。大丈夫」

『ありがとう梓兄さん』



そんな話をしていれば絵麻が注文した紅茶を運んでくる。彼女がいない間に兄さんたちがやってきていたことに驚いたようだったけれど、すぐに対応して注文を聞くあたりさすが妹と思う。



「絵麻、ちょーかーいーじゃん★」

『そりゃ私の妹だからねー』

「あはは。名前も結構な妹馬鹿だよね」

『だって絵麻可愛いもん。あ、そろそろ行かないと』



彼らと話していれば以外と時間が経ってしまったようで。そろそろ収拾がかかるころだろう。立ち上がって、移動しようとした私を椿兄さんと梓兄さんは止めた。
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